『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』橋本雅司 編 第三話「ルーツを知る」 1999年発売の安達祐実写真集『17歳』を語る「気持ち的に、握手ができた気がした」

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第21回目のゲストは、安達祐実『17歳』や山地まり『処女』など、数々の女優・タレント写真集を手がけてきた橋本雅司氏が登場。過酷なスタジオマン時代を西田幸樹氏と共にし、巨匠・篠山紀信氏のもとでアシスタントを務めた氏が考える“被写体への向き合い方”とは。浅草にある氏の事務所にうかがい、話を聞いた。


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——篠山紀信さんのアシスタントを卒業されたあと、最初のお仕事は何だったんですか?


橋本 『GORO』(小学館)の活版ページが最初だったかな。独立直後から、ありがたいことに仕事のオファーがたくさんあったから厳密には覚えていないけど、初めて撮らせてもらったグラビアは、1987年の『GORO』に掲載された、当時、日本航空キャンペーンガールを務めていた佐々木恵さんだったと思う。グラビア以外にも、雑誌のお仕事はいろいろやらせてもらったな。


——独立当初は、どういった写真を撮りたいと思われていたんですか?


橋本 単純に上手い写真を撮りたいと思っていた。決してグラビアにこだわっていたわけではなくて。何なら、すぐ近くにいる(スタジオマン時代の一年先輩である)西田(幸樹)さんのほうが良いグラビアを撮っているのが分かるから、2〜3年くらいやって、だんだん嫌になってきちゃったんだよね(笑)。「あぁ、西田さんには敵わないなぁ」って。次第に『BART』(集英社)や『Views』(講談社)、『マルコポーロ』(文藝春秋)など、ドキュメンタリー寄りの雑誌で仕事をするようになっていったね。


——グラビアから離れていた時期があったんですね! 『BART』などで撮られているときは、具体的にどんなお写真を?


橋本 ハマコー(浜田幸一)さんに密着したり、アジアの女をテーマに何カ国もまわって撮影をしたり。あと、「Choo Choo TRAIN」などの代表曲で知られるダンス&ボーカルユニット・ZOOのステージを追いかけて写真を撮らせてもらったりもしていたね。ただ、そういうのをずーっとやっていると、今度はまた、もう一度グラビアをやってみたい気持ちになって、ふと週プレを手に取ってみたんだよ。そしたら、(集英社の社員カメラマンだった)中村昇さんのグラビアがスゴく素敵で。それまではあまり週プレとの縁がなかったんだけど、俺もやってみたいって思ったところに、たまたま俺がやっていたドキュメント方面の写真を評価してくれた編集の方がいて、週プレでも撮らせてもらうようになったんだよね。確か、40歳になる少し前くらいの話だったと思う。


——年でいうと90年代の終わり頃、でしょうか。そういえば橋本さんは、1999年に、安達祐実さんの写真集『17歳』(集英社)の撮影を担当されていましたよね。実は、私が週プレで安達さんに取材をさせていただいたとき「カメラマンの橋本雅司さんが撮ってくれたとき、(中略)ありのままの自分でいられるグラビアという場所が大好きになりました」とおっしゃっていて。それがスゴく記憶に残っているんですよね。


橋本 世間から持たれる子役のイメージと、大人に成長して女性になっていく自分との間で、葛藤があったんだよね。でも当時の祐実ちゃんからは、元天才子役とか、演技が上手いとか、そういうところじゃない、ただそこに立っているだけで魅力的な人だっていうのが明快なほどに感じられたから、その“一人の女性としての素晴らしさ”を撮るだけだと思って向き合わせてもらっていたよ。篠山さんがおっしゃっていた“誠実さ”っていうのは、まさにこのことを言うんだと思う。あがった写真がどうこうじゃなく、被写体である祐実ちゃんに向き合う俺の姿勢みたいなものを、祐実ちゃんも受け取ってくれたんじゃないかなぁ。


——求められるイメージ像として撮るんじゃなく、目の前にいる一人の女性として安達さんと向き合い、見たままに撮影されたことが、安達さんとしても嬉しかったんじゃないでしょうか。それも、ドキュメント寄りの雑誌で仕事をされていた経験がある橋本さんだからこその向き合い方だったのかも。


橋本 うん、そうだと思う。実際、グラビアを撮らせてもらっていると、特に写真集までご一緒できた女の子とは、気持ち的に握手ができたような、本当の友達になれたような感覚になることが結構多くて。祐実ちゃんとは、グラビアを通して、それくらい親しい関係性になれた気がしているんだよね。実際、撮らせてもらったのは本誌で初めて撮らせてもらった16歳から、写真集を出す17歳までの約1年ほどだったと思うけど。


——握手ができた、というと?


橋本 写真集の撮影でハワイに行ったとき、祐実ちゃんから「たくさん悩んだけど、橋本さんに撮ってもらって本当に良かった」と言われて、ブワーって涙が出てきたんだよね。子どもの頃から、重たい荷物をひとりで背負って生きてきたようなお姫様から、「あなたに撮ってもらえて良かった」と言ってもらえた。その言葉に嘘がないことは明らかだったし、心と心が繋がれた感覚があったんだよね。


——なるほど。素敵なお話です。


橋本 最後、夜行便でハワイを発とうと思ったら、祐実ちゃんから手紙をもらって、同じように感謝の言葉が添えられてあったわけ。それを持って帰るとき、「あぁ、仕事をしたなー」って。ものすごく満ち足りた気持ちになったよ。


橋本雅司 編・最終話は6/2(金)公開予定! 山地まりファースト写真集『処女』を語る「写真集の前の撮影で怒ったんだよね『そんなんだったら、やらないほうがいいんじゃない?』って」


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橋本雅司プロフィール

はしもと・まさし ●カメラマン。1958年生まれ、東京都出身。

趣味=ゴルフ

写真家・三木淳氏、篠山紀信氏に師事し、1986年に独立。

主な作品は、安達祐実「17歳」、仲間由紀恵「20th」、上戸彩「SEPTEMBER FOURTEENTH」、沢尻エリカ「erika」、磯山さやか「ism」「GRATITUDE ~30~」、満島ひかり「あそびましょ。」、ほしのあき「秘桃」、吉高由里子「吉高由里子」、道重さゆみ「La」、小向美奈子「花と蛇 3」、武井咲「風の中の少女」、剛力彩芽「Shizuku」、山地まり「処女」、小芝風花「風の名前」、岸明日香「明日、愛の風香る。」、熊切あさ美「Bare Self」、芹那「Serina.」、塩地美澄「瞬間」など。

ほか、10代の頃から撮り続けているという俳優・早乙女太一の写真集や公演ブロマイド、東京浅草のストリップ劇場「浅草ロック座」の写真集なども手掛けている。

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