2022年1月21日 取材・文/とり
あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。
第5回目のゲストは、浅倉唯のデビューグラビア『かわいいが渋滞中!!』のほか、武田玲奈1st写真集『short』や川崎あや引退写真集『ジャパニーズ グラビア』など、ヤングジャンプでの撮り下ろしも数多く務めるTakeo Dec.氏。笑顔溢れる”明るいグラビア”にこだわる理由や、各作品の思い出を語ってもらった。
Takeo Dec. 作品のデジタル写真集一覧はコチラから!
――昨年の週プレでは、9月の本誌初登場以来、浅倉唯さんが大活躍されました。Takeoさんが撮影された初グラビアを収めたデジタル写真集『かわいいが渋滞中!!』なんて、いまだに売れ続けているほどです。
Takeo 唯ちゃん、スゴいですよね。素で魅力的というか。カメラを意識していないときの何気ない表情が抜群にかわいくて。僕はグラビアで、“街中で見かけた女の子が不意に振り返って、パッと目があった瞬間”を撮るのが好きなんですけど、最初に振り向きざまの唯ちゃんと目が合ったとき、ここ何年かで感じたことがないくらいのドキドキがありました。正直、ここまでビビッとくる子もなかなかいないですし、衝撃でしたね。
――その時点で、今の人気ぶりも想像できていたって感じですか?
Takeo まぁ、自分が「かわいい」と思っても、実際の人気と直結しないパターンは過去に何度もあったので、難しい世界ですよね(笑)。ただ、飛び抜けてかわいいなって思う子に出会ったら、ヤンジャンで(佐々木)希ちゃんを撮らせてもらっていたときにお世話になっていた編集さん(現・編集長)に、「こういう子がいるんですよ」ってメールを送るようにしているんですよ。これまで3人ほどお送りしましたが、そのなかのひとりが唯ちゃんなんですよね。
――なんと! 11月にヤンジャンで初登場&初表紙を飾った経緯には、そんなエピソードもあったんですね。
Takeo そうそう。実は、そうなんです。
――まさに今、グラビア以外にも活躍の場を広げられている浅倉さんですが、そのきっかけのひとつに、Takeoさんが撮られた初グラビアがあると思っていて。Takeoさん自身としては、どう捉えられています?
Takeo 自分の写真がどれほど影響しているかはさておき、そこに少しでも携われただけで幸せですよね。この瞬間のために、グラビアを撮り続けていると言っても過言じゃないですから。そう思うようになったのも、最初は希ちゃんでした(二話参照)。一度、撮らせてもらった子の活躍は自分のことのように嬉しいですし、本当、いい仕事をさせてもらっていますよ。
――昨年、ヤンジャンから発売されたAKB48・柏木由紀さんの写真集『Experience』でも、カメラマンを担当されていましたよね。アイドル歴14年、30歳になられた柏木さんの節目を祝う一冊。初グラビアの浅倉さんと違って、こちらは、10年以上もヤンジャンで柏木さんのグラビアを撮り続けられてきた関係性あってこその作品です。
Takeo そうですね。初めてゆきりんを撮影させてもらったときのことは、今でも覚えています。沖縄ロケで、着陸するまでずっと晴れていたのに、到着してメイクをしていると急に曇りだして、撮影をはじめようとした途端に雨が降り出して。「雨女なんだね」って話をしたんですよね(笑)。
そこから、継続的にヤンジャンでグラビアを撮らせてもらっていたものの、一緒に写真集をやったことは一度もなく。ゆきりんも、このヤンジャンチームでいつか写真集を出したいと思ってくれていたみたいで、昨年、30歳を迎えるタイミングで、ようやく形にできたんです。僕自身、ゆきりんが大好きだったから、実現できたのは相当嬉しかったですよ。現場でも「10年愛だ」って盛り上がっていました(笑)。
――推しメンだったんですね(笑)。どんなところがお好きなんですか?
Takeo 素朴に見えて、全ての作りが奇跡のような存在なんですよね。ゆきりんって。撮れば撮るほど、きれいになっていく気がするんです。初めて撮らせてもらったときから、そんな魅力をずっと感じていました。撮影中も、ものすごく相性のよさを感じますし。
――確かに、アイドルっぽさも大人っぽさも両方兼ね備えられていて、最近ますます美しさに磨きがかかっている印象があります。
Takeo それもあってこの写真集では、ゆきりんのいろんな一面を見せようと、王道なグラビアをやりつつ、ファッション的な要素も取り入れているんですよね。基本、ゆきりんの自己プロデュースに委ねながら。僕も使用カメラを変えたり、昔よくやっていた、フィルターを何枚も重ねて淡さを演出する方法で撮らせてもらったり、いろんな手法を試させてもらいました。
――それだけ幅広いスタイルでの撮影に挑めたのは、“10年愛”のTakeoさんに対する信頼があってこそじゃないですかね。別のインタビューで、柏木さんも「カメラマンは絶対にTakeoさんがよかった」と言われていましたし。とりわけTakeoさんは、タレントさん側からご指名を受けるなど、女の子からの人気が高いカメラマンさんってイメージがあるのですが、撮影後、女の子に喜ばれることも多いのでは?
Takeo どうなんですかね。うーん、分からないですけど、グラビアのカメラマンさんって、撮影中にパソコンを繋がない方が多いそうで。でも僕は、必ず繋ぐようにしているんですね。
それは、いかなるときも “女の子を撮らせていただいている立場”だと思っているから。どんな写真が撮れているか、その場で女の子に確認してもらいたいんです。もしかしたら、そんなところで「かわいく撮ってくれている」と、安心してもらえているのかもしれないですね。
――それはあると思いますよ。撮影中に、自分がどう写っているかを細かく確認できたら、その後の表情にも自信が表れるといいますか。実に、女の子ファーストですよね。
Takeo 僕は、僕が撮るからといって、女の子の表情やポージングに僕の色は付けたくないんです。その点、その場で写りが確認できたら、女の子も自分で「もっとこうした方がかわいいかな?」って気づきやすいじゃないですか。僕からすれば、女の子が自信を持って、自分なりの自己表現をしてくれるのがいちばん理想的なので。
――逆に、川崎あやさんの『ジャパニーズ グラビア』は、引退記念の集大成とも言える写真集。“ここからあがっていく”グラビアではなく、“ここで終わり”のグラビアでした。
Takeo マネージャーさんから「あや、もう辞めるんですよ」と連絡があったときは「え、どの“あや”ですか?」と聞き返したくなるほど、ビックリしましたよ。何せ、人気絶好調のときでしたからね。
グラビアは、もうひとつ上にあがるための場所だと思っていたからこそ、努力してあがった先に身を引く子もいるんだって。でも、あやちゃんは、引退する日まで全力で楽しんで活動していた。
この引退写真集でも、冬の寒い時期だったのに平気な顔してプールに入ってくれたし、「あやちゃんと言ったらハイレグだから、バナナやスマホなどの小物を使って、どこまで隠せるか試してみようよ」なんて遊びにも付き合ってくれたし。今思い返しても、スゴい人だったなぁと思いますね。
――特にこの表紙。初めてみたときのインパクトが忘れられません。
Takeo 僕、顔が写っていないカットとか絶対に撮りたくないんですよ。女の子をあげてあげたいと言っておきながら顔を撮らないって、何か違うじゃないですか。この表紙は、最後だったから、サヨナラだったからできたものなんです。もしグラビアを引退したあとも芸能活動を続ける予定だったとしたら、絶対に大反対していましたよ。
――挑戦的でしたよね。とはいえ、表紙のインパクトを裏切らないくらい、内容も素晴らしかったです。川崎さんがグラビアアイドルとして培ってきた表現、誇り、全てが詰まっていて。
Takeo ありがとうございます。この写真集はスペインで撮ってきたんですけど、そもそもグラビアの撮影でスペインに行くって、あまりないと思うんですよ。「水着、撮れるとこあるの?」「マジでスペインに行くの?」って、編集の方にずっと交渉していたくらいです(笑)。現地でナビゲートしてくれた方も、こういう撮影に慣れていなくて、どこで水着に撮影ができるのか分からないままスタートして……。
――大変だったんですね。衣装もロケーションも、完璧なグラビアだと思っていましたが。
Takeo 赤いフラメンコドレスのシーンは、スペインに行くわけですし、撮影前からある程度「こんな絵が撮れるだろうなぁ」と予想できましたが、例えば、このピンクのビーチチェアが置いてあるロケーションは、全く把握していなくて。
候補として送られてきたホテルの一覧が、現地のチープなラブホテルみたいなところばかりで困っていたら、一個だけ、王室みたいな部屋とプールがついている、いい感じのホテルがあったんですよね。ちょうど、ビーチチェアと同じようなピンク色の水着を持ってきていたし、「ここ、いいんじゃない?」って。
――え、これ偶然だったんですか!? てっきり、計画通りに衣装を用意して撮影されたものだとばかり思っていましたよ。
Takeo 実はそうなんですよ。ちなみに、ビーチであやちゃんがヌードになっているシーンも、偶然、辿り着いた場所でした。移動中に、現地の方が「この先にヌーディストビーチがありますよ」って教えてくれて。あるなら事前に教えてくれよ!と思いながら行ってみたら、あやちゃんもいい脱ぎっぷりを見せてくれて。真っ裸の現地のおじさんが「good」って親指を立ててくれたんですよね(笑)。
――まさに偶然続きのなか、生まれた写真集だったんですね。
Takeo そうなんです。不思議なことに、いい写真集ほどいいミラクルが起こるんですよね。今となっては、どれも笑える思い出話ですけど(笑)。
Takeo Dec.編・最終話は1/28(金)公開予定! 深読みしなくていい。届けたいのは、女の子のかわいさだけ。
Takeo Dec. 作品のデジタル写真集一覧はコチラから!
Takeo Dec.プロフィール
たけお・でぃっせんばー●写真家。1970年生まれ、埼玉県出身。
趣味=無趣味すぎなので流行りのキャンプ始めてみました
写真家・ホンマタカシ氏に師事し、1999年に独立。
週刊プレイボーイのほか、週刊ヤングジャンプ、週刊ヤングマガジン、週刊少年サンデーなど、各誌でグラビアを撮り下ろす。主な作品は、成海璃子『12歳』、佐々木希『nozomi』、前田敦子『あっちゃん』、武田玲奈『short』、篠田麻里子『Memories』(桑島智輝氏と共著)、山田南実『みなみと』、川崎あや『ジャパニーズグラビア』、十味『とーみにこ』、沢口愛華『背伸び』、柏木由紀『Experience』、田村保乃『一歩目』など。明るく笑顔を捉えた写真が特徴で、タレントからの支持も多く集めている。