『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』LUCKMAN編 第二話「思い出を知る」 グラビアに憧れ、師匠・渡辺達生氏のもとへ

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第8回目のゲストは、週プレ名物・創刊53周年スペシャル企画「NIPPONグラドル53人」などの大人数グラビアには欠かせないLUCKMAN(樂滿直城)氏が登場!明るく現場を盛り上げる意識のほか、えなこ扮する『ONE PIECE』キャラクターのコスプレグラビア『PRINCESS』や週プレで初水着グラビアに挑戦した大型新人・吉田あかりの『2022年のヒロイン。』などの撮影裏話も聞いてみた。


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――オーストラリアではじめた観光カメラマンのアルバイトを機に、本格的にプロのカメラマンを目指されたLUCKMANさん。その後帰国し、六本木にあった写真スタジオ・アートセンターに入られたとのことでしたが、カメラマンへの道は、ここから本格的にはじまったという感じですかね。


LUCKMAN はい。アートセンターでは、2年ほどスタジオマンとして働かせていただきました。仕事をこなしながらも、スタジオに来られるカメラマンさんの姿を見ては、卒業後、誰の弟子につこうかをずっと考えていましたね。あいにく、僕が興味のあるジャンルで活躍されているカメラマンさんには、なかなか巡り会えなかったんですけど。


――興味のあるジャンルとは?


LUCKMAN グラビアです。スタジオ勤務をはじめて、わりと早い段階で「グラビアを撮るカメラマンになりたい」と思っていたんですよ。理由は、楽しそうだから。写真を通して伝わってくる楽しさもさることながら、スタジオマン時代に数回行かせてもらったグラビア現場もやっぱり楽しくて。学生時代、漫画目的で購読していた『ヤンマガ』や『ヤンジャン』に掲載されていたグラビアもよく見ていましたしね。もちろん当時は、カメラマンが誰だとか、撮り方がどうとか、そんな見方は一切していませんでしたよ。何ならグラビアにカメラマンの名前が記載されてあるのを知ったのは、スタジオに入ってからなので(笑)。ただ、そうやって意識的に見ていると、なぜか必ず渡辺達生さんのグラビアで目が止まっていたんですよね。


――渡辺さんは、80年代からグラビアシーンで大活躍されている大御所カメラマン。大胆な貝殻ビキニで一躍話題となった武田久美子さんの写真集『My Dear STEPHANIE』(ワニブックス)を撮られたことでも知られ、後のLUCKMANさんのお師匠さんでもありますよね。当時は、渡辺さんが撮るグラビアのどこに惹かれていたんですか?


LUCKMAN 静止したポーズで“見せるところはしっかり見せる”グラビアが多いなか、渡辺さんが撮るグラビアは、女の子の笑顔や仕草を自然に写している気がしたんです。見ているこちらまでつられて楽しくなっちゃうグラビアだったというか。それで、どうにかして渡辺さんに弟子入りしたいと思っていたら、スタジオ卒業間際にスタジオの支配人さんが渡辺さんを紹介してくださって。すぐアシスタントにつかせてもらえるよう、速攻で連絡したんですよね。


――スゴい行動力!


LUCKMAN 一通り作業を覚えたら早く次のステップに進みたいと、スタジオ勤務中、ずっとウズウズしていたんですよ(笑)。スタジオを出た翌日には、もう渡辺さんの事務所に出入りしていました。ただ、僕の前にふたりアシスタントの先輩がいて、渡辺さんの現場について撮影の補助をするのは基本的にそのふたりだったので、最初の1〜2年は渡辺さんとお話しする機会がほとんどありませんでした。事務所にこもって、ひたすら写真の整理をしたり、掃除をしたり。ひとり先輩が独立されてからは、僕も現場の手伝いをさせてもらいましたけど、振り返ると失敗談ばかりが思い出されますね。カメラを落としたこと、フィルムを無くしかけたこと……、あとは何があったかなぁ?いまだに渡辺さんに言えていないミスもいくつかあるはずです(笑)。


(と、ここで同事務所内で作業中だった渡辺達生氏ご本人が振り返り……)


渡辺 いちばんは、ファッション誌の撮影でニューヨークにあるティファニー本店を借りたときじゃないかなぁ。たくさんの宝石が並んでいる店内での撮影で、警備体制も厳重。ただでさえ気を遣う現場だったにもかかわらず、いざ撮影の準備をはじめると、樂滿が急にムズムズしだして「ウンコが出そうです」とか言い出すんですよ(笑)。ちょっとトイレに行くだけなのに、ふたりの黒人ボディーガードが樂滿の後ろにピッタリとくっついていて。先に準備を進めようにも、露出計を持ったまま連れて行かれちゃったから、残された僕は何もできなかったんですよね。


LUCKMAN あぁ、ありましたね。前の晩に泊まったホテルの部屋がめちゃくちゃ寒かったんですよ。エアコンの止め方が分からず、もういいや!と着込めるだけ着込んで寝たら、翌日に思いっきりお腹を壊してしまったという……。僕だって、ティファニー本店という緊張感のある現場で便意をもよおすとは思ってもいなかったですよ!結局、腹痛は一日中続きました。体調管理の重要性をつくづく実感させられる出来事でしたよ。


渡辺 ほかのアシスタントに話を聞けば、もっといろんなエピソードが出てくると思いますよ。僕の知らないところで、アシスタント同士かばいあいながらやっていた部分もあるだろうから。まぁひとつだけ言えるのは、ミスが多いとはいっても、彼はとても優秀なアシスタントでした。人より多く仕事を任せていた分、失敗も多いってだけなんです。一度、事務所の車を磨くのにワックスと間違えてコンパウンドを使い、フロントをガリガリにしたことがありましたけど(笑)、決してデキない人ではなかったんですよね。


――なるほど。それにしても、アシスタント同士で助け合えるのはいいですね。これまでカメラマンさんからお聞きしたアシスタント時代のお話では、師匠と弟子の一対一であることが多かったので新鮮に感じましたよ。


渡辺 うちの事務所では基本的に、アシスタントが次のアシスタントを探すようにしているんですよ。ひとり辞めちゃったけど、樂滿だけで24人は連れてきてくれたよね。


――えっ、そんなに!?


LUCKMAN はい。それこそ、僕のすぐ下に藤本(和典)がいて、そのふたつ下に佐藤(佑一)がいます。


――今まさにグラビア界の第一線で活躍されている3名じゃないですか……!大人数モノのグラビアで御三方の名前が並んであるのをよくお見かけしますよ。


『週刊プレイボーイ』創刊53周年企画『NIPPONグラドル53人』。総勢53名のグラビアアイドルをLUCKMAN氏、藤本和典氏、佐藤佑一氏で撮り下ろし。


LUCKMAN 大人数のグラビアを撮るときは、何でも気兼ねなくお願いできる藤本や佐藤が一緒だとスゴくやりやすいですね。向こうも僕に遠慮なく任せてくれますし、できないときは「できない」とハッキリ言えますし。


――50人以上もの女の子が集結したグラビア現場というのもなかなか特殊だとは思いますが(笑)、アシスタント時代から続く関係性がこうして仕事に活きているのはいいことですよね。


LUCKMAN そうですね。いまだにみんな仲が良いですし。良ければ、渡辺さんと僕ら弟子たちの写真が収録された写真集『渡辺家 素顔のアイドルたち1974-2016』(集英社)も読んでみてください。対談ページもあって、かなり読み応えがあるので。結局僕は、渡辺さんのもとで4年ほどお世話になったんですよね。最初の1〜2年はほぼ事務所作業でしたが、このアシスタント歴は恐らく歴代最長だと思います。


LUCKMAN編・第三話は4/22(金)公開予定! 北野武を撮った緊張の3分間で「カメラマンとしての度胸がつきました」。


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LUCKMAN(樂滿直城)プロフィール

らっくまん(らくまん・なおき) ●写真家。1976年生まれ、福岡県出身。

趣味=ギター、自粛期間中ピアノも始めました。

写真家・渡辺達生氏に師事し、2006年に独立。

主な作品は、井上真央『井上真央 2007』、安倍なつみ『Cam on』、永尾まりや『マブイ!まりや。』、天木じゅん『Jun limited』、菅井友香『フィアンセ』、長澤茉里奈『ポッチポッチ イケナイ・スイッチ』、橋本梨菜『RIRIKOI』、市川美織『PRIVATE』、えなこ『えなこカレンダーブック 2020.4~2021.3』、寺本莉緒『CURIOSITY』など。明るく楽しげなグラビアもさることながら、コスプレなどの作り込んだ世界観でも空間を活かした構図で印象的な絵を作る。

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