『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』LUCKMAN編 第三話「こだわりを知る」 ナチュラルも、作り込みも。実力と信頼の裏側

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第8回目のゲストは、週プレ名物・創刊53周年スペシャル企画「NIPPONグラドル53人」などの大人数グラビアには欠かせないLUCKMAN(樂滿直城)氏が登場!明るく現場を盛り上げる意識のほか、えなこ扮する『ONE PIECE』キャラクターのコスプレグラビア『PRINCESS』や週プレで初水着グラビアに挑戦した大型新人・吉田あかりの『2022年のヒロイン。』などの撮影裏話も聞いてみた。


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――渡辺達生さんのアシスタントを卒業されたあとは、どのようなお仕事を?


LUCKMAN 独立当初は、グラビアDVDのパブ(リリースのタイミングで雑誌に掲載される商品告知用のイメージカット)をよく撮っていました。映像を撮る合間にササっと撮らなければならないばかりか、当然それなりのクオリティも求められたので、かなり修行になりましたよ。渡辺さんの現場を思い出しながら、何とか現場を進めて……。限られた場所でしっかり絵を撮りきるための引き出しも、ここでたくさん増やせましたね。同時に、雑誌からいただいた仕事ではなかったものの、各誌面にクレジットが載ったことで、多くのグラビア編集の方に僕の名前を知ってもらういい機会にもなりました。もちろん、自分の作品集を持って営業に行くこともありました。


――そこから少しずつ雑誌でのお仕事も増えていったんですか?


LUCKMAN そうですね。独立して最初にお世話になったのは、小学館から出ていた情報誌『sabra』でした。アシスタント時代にお世話になった編集者さんと顔見知りだったことから、独立のご祝儀として取材の撮影や流行アイテムの物撮りの仕事をいただいたので、厳密には、パブの影響で繋がった雑誌ではないですけど。ただ、そこで「ちゃんと撮れるんだ」ってことを写真でアピールするうちに、『sabra』のなかでいちばんやりたいと思っていたエンタメページを、運よく撮らせてもらえることになったんです。俳優さんや映画監督さん、外国人タレントさんなど、そのとき話題の有名人を紹介する1〜2ページの記事に使用する写真で、毎回3分ほどしか撮影時間がもらえないというもので。


――えっ、3分ですか!?


LUCKMAN 短いですよね。僕も最初は「えー!?」って思いましたよ(笑)。でも、だんだん「3分でこの人を撮りきらなきゃいけないんだ」と、どことないミッション感が楽しくなってきちゃって。特に緊張したお相手は、北野武さん。ただ撮るだけでもドキドキなのに、3分間で背景を3回変えて撮ってほしいと言われたんですよ。


――少しも手間取れないやつじゃないですか……。


LUCKMAN だから事務所にいたアシスタントに武さん役をお願いして、ストップウォッチで時間を測りながら、1週間ほど練習を繰り返して本番に挑みました。それだけ念入りにリハーサルをしても、いざ武さんを目の前にしたら緊張どころじゃなかったです。それでも「武さんといえど、同じ人間なんだから大丈夫!」と心の中で言い聞かせて、何とかリハーサル通り撮り終えて。思いのほかうまく撮れていて、ホッとしましたよ。それ以降、相手がどんな方であろうと、常に変わらぬ気持ちで撮影に臨めるようになったというか。カメラマンとしての度胸も相当つきましたね。


――短い時間で多くのバリエーションが撮れるのは、どの現場に行っても応用がききますし、そのような条件付きの現場を踏めば踏むほど、自信にも繋がりそうですね。ちなみに『sabra』にはグラビアページもあったはずです。本格的に雑誌グラビアのお仕事をされるようになったのも、ここからですか?


LUCKMAN そうですね。エンタメページに続いて、数ページのグラビアや、『sabra』から出ていたほぼ写真集みたいなムック本を、少しずつ撮らせてもらうようになりました。『sabra』にはかなり育ててもらいましたよ。あるときは、当時の編集長に電話で1時間ダメ出しをくらったこともありました。独立したあとに、そこまで叱ってもらえるなんて、なかなかないじゃないですか。スゴくありがたかったですね。ダメ出しされたあともお仕事は振ってくださいましたし、愛を感じましたよ。


――本来ダメだったら、しばらくお仕事の依頼が来なくなるものですもんね。『sabra』以外の雑誌でグラビアを撮るようになったのは?


LUCKMAN 独立して1年ほど経った頃、事務所の方と知り合いだった関係で、井上真央ちゃんの写真集『井上真央 2007』(PPM)を撮らせてもらったのが、ひとつのきっかけになりましたね。何度か真央ちゃんの宣材写真を撮らせてもらっていたので、お互いに顔見知りではあったんですけど、一冊の写真集を撮り下ろすのは初めての経験。何も分からぬまま現場入りしたのを覚えています。


――LUCKMANさんにとって初めての写真集ですか。撮影中は何を意識して撮っていたんですか?


LUCKMAN いわゆる水着グラビア写真集ではなく、アメリカのロスからラスベガスに移動するまでの様子をロードムービー風にのんびり撮る感じだったので、あまり“撮られている意識”を持たせないよう、空気になるつもりでカメラを構えていました。結局、ラスベガスに行きはしたものの、そこで写真は撮らなかったんですけどね。


――えっ、どうしてですか?


LUCKMAN 撮影当時、真央ちゃんはまだ19歳だったし、女優としても駆け出しの頃だったので、次の機会を残しておいてもいいんじゃないかって話になったんです。実際、後の2012年に『週刊少年マガジン』(2012年5月30日号/講談社)のグラビアで、ラスベガスを舞台に真央ちゃんを撮らせてもらいましたよ。一応、写真集の続きを匂わせる感じで。それは僕にとってもいい思い出になりましたね。


――初めて撮った写真集が時を経て完全着地したと。すてきなお話ですね。


LUCKMAN で、その真央ちゃんの写真集を見たワニブックスの編集者の方から「ああいう感じで撮ってくれない?」とお声がけいただいて、今度は安倍なつみちゃんの写真集『Cam on(カム オン)』をベトナムで撮らせてもらうことになったんです。そして、また別の出版社の方から「あの写真集の感じで……」と、どんどん繋がっていって。それで、いろんな雑誌でグラビアを撮らせてもらうようになったんですよね。


――週プレでの初撮り下ろしも、その流れで?


LUCKMAN そうですね。いちばん最初は確か、当時人気セクシー女優だったRioちゃんでした。かわいいし、スタイルもいいし、正直めっちゃタイプの女の子で(笑)。写真集のパブと一緒に僕の名前が週プレに載るだけでもうれしかったのに、最初の撮り下ろしがRioちゃんなんて最高じゃん!と、かなり気合が入りましたね。つい先日、このインタビューに備えて久々にRioちゃんのグラビアを見返していましたが、いやらしいというよりは爽やかでカッコいい雰囲気に仕上がっていて。我ながらいいグラビアだなぁと思いましたよ。


――そうして今の活躍に繋がっていくわけですね。お話を聞いていて、アシスタント時代のご縁がありながらも、LUCKMANさんの実力であらゆるお仕事を獲得されていったのが伝わってきました。週プレ グラジャパ!から出ている作品で言うと、えなこさんのグラビアは幅が広いですよね。『ワールド・プリンセス』『PRINCESS』など、作り込まれた世界観でのコスプレグラビアだけでなく、『Calendar Girl』のように全くナチュラルなグラビアも撮られているんですから。特に後者は、えなこさんからの信頼も感じられます。



LUCKMAN ありがとうございます。自然な風景のなかでえなこちゃんを撮るのは、新鮮で面白かったですよ。どうにかして、えなこちゃんのプロフェッショナルな表情を崩そうと、シャッターチャンスを逃さないよう意識していました。


――渡辺さんが撮られていた自然な笑顔のグラビアこそが、LUCKMANさんの原点ですもんね。逆に、作り込んだ世界観で撮る際はどんなことを意識しているんですか?



LUCKMAN 太陽の位置や天候などを気にしながら撮る外ロケと違って、作り込んだスタジオでの撮影は、僕だけじゃなく、周りのスタッフさんとの協力がより重要になってきます。スタジオの時間もありますし、撮り終えたと思ったらスパッと次の場面に転換していかないと、予定していた絵が撮り切れないなんてことになりかねないので、集中力も必要です。ただ、決まったポージングで必要な絵が撮れたら、多少セットが崩れてもいいからと、自由に動いてもらうこともありますね。やっぱり、崩れた先にある発見こそがグラビアの醍醐味ですから。自然に撮るのも、作り込んだ世界観で撮るのも、どちらも楽しいですよ。


――と、ここで少し話が変えまして。もとは「樂滿直城」名義で活動されていたじゃないですか。いま「LUCKMAN」と名義が英字表記になっているのには、何か理由があるんですか? 


LUCKMAN いや、特にないです(笑)。独立して10年経ったタイミングで、何となく変えただけですね。今でもたまに編集さんが間違えて「樂滿直城」にしちゃうことがあるんですけど、それでも「間違いじゃないからいいか」と思っているくらいなので。


――字面だけで見ると「樂滿直城」と「LUCKMAN」では受ける印象がだいぶ変わります。


LUCKMAN ま、そうですよねぇ。まさに「樂滿直城」名義で活動していたときは、名前の印象から、お堅いおじいさんだと思われがちでした(笑)。画数多いし、見た目もカクカクしすぎだし、「LUCKMAN」の方が気軽に呼んでもらえそうじゃない?!と。そんな動機も、なくはなかったですね。でも、名義を変えたタイミングでカメラマンとしての意識が変わったとか、そういうのは全くありません。オーストラリアに住んでいたときも、友達から「ラックマン」と呼ばれてはいたので、正直どちらで呼ばれても特に違和感ないですね。


LUCKMAN編・最終話は4/28(金)公開予定! グラビア現場は明るくあれ!女の子を楽しませる“とっておきの〇〇〇〇”とは?


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LUCKMAN(樂滿直城)プロフィール

らっくまん(らくまん・なおき) ●写真家。1976年生まれ、福岡県出身。

趣味=ギター、自粛期間中ピアノも始めました。

写真家・渡辺達生氏に師事し、2006年に独立。

主な作品は、井上真央『井上真央 2007』、安倍なつみ『Cam on』、永尾まりや『マブイ!まりや。』、天木じゅん『Jun limited』、菅井友香『フィアンセ』、長澤茉里奈『ポッチポッチ イケナイ・スイッチ』、橋本梨菜『RIRIKOI』、市川美織『PRIVATE』、えなこ『えなこカレンダーブック 2020.4~2021.3』、寺本莉緒『CURIOSITY』など。明るく楽しげなグラビアもさることながら、コスプレなどの作り込んだ世界観でも空間を活かした構図で印象的な絵を作る。

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