2022年5月20日 取材・文/とり
あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。
第9回目のゲストは、橋本萌花の初グラビア『社長令嬢はウーバーイーツ』ほか、尾碕真花や寺本莉緒などのグラビアを多数撮り下ろしてきた栗山秀作氏が登場!関係性から作り上げるグラビア、そして奥深き白ホリの魅力を語る。
――丸谷(嘉長)さんのアシスタントから独立された後、ようやく自身の写真を撮られるようになった栗山さんですが、各出版社に見せる作品撮りもままならない中で、一体どのようにしてカメラマンのお仕事を獲得していかれたんですか?
栗山 最初のうちは、ほとんど仕事がなかったですよ。ありがたいことに、独立のご祝儀として、知り合いの編集さんからお仕事をいただくも、どれも1〜2回やっておしまい。実力がないと、次の仕事にはつながりません。アルバイトをしつつ、とにかく作品撮りは続けていましたが、カメラマンとして食えるようになるまでも、結構長かったですね。ただ、独立して2年目の頃だったかな?週プレで、芸能界デビューしたばかりの岩佐真悠子ちゃんのグラビアを撮らせてもらったんですよ。というのも、彼女の担当編集さんが丸谷さんと何度もお仕事でご一緒されていた方で、丸谷さんが声をかけてくださったのか分からないけど「くりちゃん、やってみる?」って急に連絡があったんです。ラッキーな話ですよね。これが僕にとっての初グラビアです。
――へぇ、そうだったんですね!岩佐さんといえば『ミスマガジン2003』でグランプリに選ばれた元女優さん。巡り巡ってきた大きなチャンスですね。
栗山 はい。最初は確か、北海道で撮影をしたんですね。そしたら、そのグラビアを見てくださった他の編集部の方からも声がかかるようになって。真悠子ちゃんにも直接「また栗山くんに撮ってもらいたい」と言ってもらえたんです。結局、週プレでは6〜7回ほど真悠子ちゃんの撮り下ろしを担当させてもらい、紙の写真集『Iwasa Mayuko』(集英社/過去の週プレ本誌撮り下ろしカットと写真集用に新たに撮り下ろしされたカットで構成された一冊)まで、ガッツリやらせてもらいました。週プレの他の編集さんからお仕事をいただけるようになったのも、真悠子ちゃんのグラビアがきっかけでしたし、やっとカメラマンの仕事だけで飯が食えるようにもなったんだから、本当に、真悠子ちゃんのおかげで今の僕があるようなものですよ。
――タレントさんからの逆指名はうれしいですね。とはいえ 、なぜ岩佐さんは、まだ新人カメラマンだった栗山さんを指名され続けたんでしょう。心当たりはありますか?
栗山 僕が右も左も分からない新人だったからじゃないですかね。撮影当日に、「あの、次の巻頭グラビア、こういうイメージで考えてきたんですけど、どうしましょう!?」「じゃあ、ここでこうしてください」って、直接、真悠子ちゃんに相談していたので(笑)。当時まだ高校生で新人グラドルだった彼女と同じ目線で作っていく。その姿勢が、彼女的にもやりやすかったんじゃないかなぁ。
――なるほど。確かに、カメラマンと女のコが同じ目線でっていうのは、珍しいのかもしれません。その気持ちの表れか、写真集『Iwasa Mayuko』の最後には「栗山さん、これからも頑張っていこうね」と岩佐さんご本人からのコメントが掲載されていますね。
栗山 僕、編集さんに「これ載せない方が良くないですか?」って相談したんですよ。真悠子ちゃんのファンからすれば、どの目線でこのコメントを読めばいいか分からないと思ったので。でも編集さんが「いや、この写真集は岩佐さんと栗山さんの関係性で出来た一冊なんだから、絶対に載せなきゃダメでしょう」と言ってくださって。真悠子ちゃん自身、そうやって関係性を大事にしてくれるコなんですよね。「くりちゃんはカメラマンとして、私はタレントとして。一緒に頑張っていかなきゃね」って。
――栗山さんのインスタグラムを見させていただくと、掲載情報だけでなく、現場でのタレントさんとのエピソードが書かれている場合もあるじゃないですか。それだけ関係性を大事にされているんだなぁと、いつも読んでいてホッコリするんですよね。
栗山 うそ!?そんなに書いているっけ(笑)。でも、本当に関係性は大事だと思いますね。カメラマンとしては不純かもしれませんが、僕って、いい写真、カッコいい写真が撮れた思い出以上に、女のコとこういうコミュニケーションがあったって思い出がずっと記憶に残っているんですよ。そうそう、真悠子ちゃんとの初めての撮影で北海道に行ったとき、温泉シーンがあったんですね。普通に浴場のなかで撮影をしていたんだけど、ふと窓の外から温泉のなかを撮りたいと思って。裸足のまま、窓から外に出て行ったんです。冬の北海道。当然、外は雪です。真悠子ちゃんが「えっ、裸足、雪、大丈夫!?靴、履きなよ」って心配してくれるなか、「いい!大丈夫」なんて言いながら撮影をしたんですよね。
――す、スゴいですね……!
栗山 靴を履きに戻る間、彼女を寒いなか待たせるくらいなら、裸足で出て行ってサッと撮ってしまえばいいかなって。初めての現場で、どうすればいいか分からずにとった行動ではあったものの、真悠子ちゃんもかなり喜んでくれて。それがきっかけで真悠子ちゃんとの距離が近づいた気がしたんです。
――栗山さんの気遣いや「撮りたい」という真っ直ぐな気持ちが伝わったんでしょうね。
栗山 撮影中、女のコに心を開いてもらうには、まず女のコと同じ立場に立って挑まないといけないなと。真悠子ちゃんの現場でそう実感してから、僕は必ず半袖短パンで撮影をするようにしています。水着姿の女のコとなるべく同じ格好をしていないと、暑さも寒さも分からないから。格好を近づけただけで、気持ちを通い合わせられるとは思っていませんが、最低限、そこは合わせるべきかなぁって。僕なりのこだわりですね。
――関係性というと、個人的に気になっていたのが橋本萌花さん。初グラビアの『社長令嬢はウーバーイーツ』と、その半年後に撮影された2回目のグラビア『社長令嬢はひたむき』を見て、彼女の表現の幅がグッと広がったのを感じたのですが、多少なりとも、栗山さんとの関係性にも変化があったんじゃないかと思って。
栗山 『ウーバーイーツ』は“初グラビア感”がスゴいよね(笑)。萌花ちゃんは、バーレスク東京(東京六本木にあるエンターテイメントショークラブ)でダンサーをやっていたコで。露出には抵抗がない様子だったけど、カメラを向けられて、何をどうすればいいか全く分かっていない状態だったと思います。萌花ちゃんに限らず、初めましてのコにはいろんなアプローチを試すようにしていて。例えばこのときは、冷たいプールに入ってもらったり、服のまま海に飛び込んでもらったり。何がどう当たるか分からないなりに、萌花ちゃんの表情が良くなるポイントを探りながら撮っていた記憶があります。それが、萌花ちゃん自身の学びにもなったのか、2回目にお会いしたときは、とても撮りやすくなっていてビックリしました。お互いに、ひとつ深い表現に踏み込めた感覚があったのは、確かな気がしますね。
――橋本さんの成長が、さらに関係性を深くしたと。
栗山 はい。そうやって成長や変化が感じられるのも、グラビアの醍醐味ですよね。僕、同じコを2回、3回と撮らせてもらうの、好きですもん。
――お会いする回数が増えるたびに、やはり関係性も変化しますからね。
栗山 そういう意味では、泊まりロケも大好きですね。最近は、コロナの影響で難しくなっちゃったけどさ。別に、わざわざ遠くへ行かなくても、近くを探せば、似たような風景で撮れないこともないんですよ。でも、一泊したあとの翌朝の表情って特別なんですよね。1日目はどう捻っても出なかった表情がサラッと出たりして。一緒に晩飯食って、何日間も一緒にいることで変化する関係性もありますし、本当、早く泊まりロケが復活してほしいですよ。
――切実!ところで、これまで撮影されてきたなかで、印象的な泊まりロケって何かあります?
栗山 また話が戻っちゃうけど、真悠子ちゃんの写真集の撮り下ろしで奄美大島に行ったときかな。泊まりがけのロケにもかかわらず、撮影当日までロケ地を決めていなかったんですよ。
――え!どういうことです?!
栗山 事前に編集さんから「栗山さんと岩佐さんで、行きたいところを考えておいてください」と言われていたのに、お互い何も考えていなかったんです。当日の朝、うちの事務所前に集合して。編集さんに「どこかいいところありました?」と聞かれても、お互い「い、いやぁ?」みたいな(笑)。編集さんもビックリしたと思います。「いやぁって、撮影、今日っすよ!」って。結局、その場で奄美を提案して、飛行機を予約したんですよね。
――そんな行き当たりばったりな撮影だったなんて!慣れ親しんだ関係性じゃないと出来ないですよね。
栗山 おっしゃる通り、お互いに信頼関係がないと無理ですよね。むしろ、基本的に僕は、ちゃんと打ち合わせをしてから撮影に行きたいタイプ。ある程度決めておかないと僕も心配だし、編集さんや僕のなかにある“今、そのコのこういうのが撮りたい”って目標を決めておくことは大事だから。と言いつつも、現場に行けば、大抵打ち合わせ通りにはならないんだけどね。撮影当日に初めてお会いして「想像していた雰囲気と違うな。こっちの方がいいな」と思ったら、あえて打ち合わせとは違った方向に振ることもありますし。もちろん、編集さんと相談のうえで。
――新人のコや事前情報の少ないコは、会ってみないと分からない部分も多いですもんね。具体的に、現場で方向転換して良い仕上がりになった女のコって、誰かいらっしゃいますか?
栗山 週プレで撮らせてもらった葵うたのちゃんかな。「ミスマガジン2020」のファイナリストに選ばれた女優志望の女のコで、事務所がASOBISYSTEM(今や世界で活躍中のきゃりーぱみゅぱみゅも所属している事務所)なんですよ。それもあって、かわいい系のグラビアが合うんじゃないかと予想していたら、想像以上に魅力的な女のコだったんですよ。まず、一発目に「こちらから指示を出してあげないとうまく動けないだろうなぁ」と思いながらも、彼女の自由演技に委ねてみたんです。よくある坂道で「自由にやってみて」とだけ伝えて。そしたら 、とびっきりの表現力で現場を魅了してくれて、その場にいたスタッフ全員が心を撃ち抜かれたんです。
――デジタル写真集『彼女には何かがある。』の冒頭に収録されているこちらのカットですね。この動きを自ら引き出されるとは……。タイトルの通り「何かがある」気がしますね。
栗山 何も言っていないのに、靴を脱ぎ出して、肩紐をずらしはじめちゃうんですよ?最初はこちらが引っ張ってあげなきゃと思っていたのに。何も言うことがなかったどころか、むしろメロメロにされちゃいましたよね(笑)。
――葵さん、そこまでグラビアをメインにされている方ではないですけど、そんなお話を聞いたら、また週プレでの撮り下ろしが見てみたくなりましたよ。
栗山 それがうれしいことに、つい先日、週プレで2度目のうたのちゃんの撮影をしてきたんですよ。担当編集の方から「うたのちゃん、また撮影お願いします」と言われたときの喜びはハンパなかったなぁ(笑)。
――えっ、めっちゃタイムリーじゃないですか!というか、そのコの意外性を引き出すために、いろんなカメラマンさんに撮ってもらうのが、新人さんによくあるパターン。同じ女のコを同じスタッフィングで撮影するのって、わりと稀なはず。2回連続で栗山さんに撮影のお話があったのは、それだけ葵さんが追求しがいのあるコだってことですよね。
栗山 そうだね。だから僕も、うれしさの反面、1回目を超えなきゃならないプレッシャーもあって。撮影日までの数日間は、良い意味で辛かったです。スタイリストの牧野香子さんも同じ気持ちだったみたいで。「うたのちゃんに合う衣装を探したけど、見つからなかったから作ったの。でも、その後見つけた既製品の衣装の方が絶対にいいから、これ、作ったけど使わなくていいからね」と、わざわざ伝えてくれたんです(笑)。それくらい、周りを夢中にさせちゃうコなんですよね。うたのちゃんって。
――うわぁ、早く2回目の撮り下ろしが見たいです……!
栗山秀作編・最終話は5/27(金)公開予定! 「駆け出しの女のコを白ホリで撮りまくりたい」。お気に入りのグラビアと展望を語る。
栗山秀作プロフィール
くりやま・しゅうさく ●カメラマン。1972年生まれ、高知県出身。
趣味=映画鑑賞
写真家・丸谷嘉長氏に師事し、2000年に独立。
主な作品は、小松彩夏『アヤカのナツ』、『アヤカのゼンブ』2004、堀北真希『Castella~カステラ』2006、岩佐真悠子『IWASA MAYUKO』2007、真野恵里菜『MANO DAYS ~二十歳の初恋~』、『Escalation』、『ERINA』、火将ロシエル『ignis』など。スタジオでの撮影も得意としており、ファッションブランド・KIKS TYO×週プレコラボTシャツの撮影も手掛けている。