『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』佐藤佑一編 最終話「おすすめを知る」 変化に身を委ねる感性。「人が思いつくことは、自然には敵わない」

グラビアの読みかた—WPBカメラマンインタビューズ—

佐藤佑一編 最終話「おすすめを知る」 変化に身を委ねる感性。「人が思いつくことは、自然には敵わない」


あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第10回目のゲストは、『週刊ヤングジャンプ』にて雪平莉左の初グラビアを撮り下ろし、今年4月に発売されたファースト写真集『とろける』までを手掛けた佐藤佑一氏が登場!グラビアを撮る際のコミュニケーションや、カメラを持ち始めた頃から撮り続けている母の写真について語る。


佐藤佑一 作品のデジタル写真集一覧はコチラから!


――週プレ グラジャパ!にある作品のなかから、お気に入りのグラビアを教えてください!


佐藤 もちろん(三話でお話した)雪平莉左さんのデジタル写真集はどれもおすすめなんですけど、個人的に思い入れがあるのは芹那ちゃんの『RE BORN』ですね。これ以前にも何度か撮影させてもらいましたし、ファースト写真集を担当させてもらった関係性でもあるので。


芹那『RE BORN』より


――30代を目前に控えていた芹那さんの大胆な脱ぎっぷりが印象的なグラビア。テレビで見せていたかわいらしいキャラクターのイメージとギャップがあります。


佐藤 世間的には、“声が特徴的なぶりっ子キャラ”って感じでしたよね。でも、実際の芹那ちゃんは、仲間うちをスゴく大事にする思いやりのある女の子。心優しい性格の持ち主なんです。これは、そんな芹那ちゃんにとって久々のグラビアでした。彼女なりにいろいろ悩みもあっただろうし、新しい一面を見せていこうと、相当、気合いが入っていたんでしょうね。撮影中、あの特徴的な声で「どうしたら綺麗に見せられるだろう?」と呟き、自ら衣装を脱いでいったんです。思わず涙が出そうになりましたよ。「芹那ちゃん、本気だ」って。


――その話を聞いたうえでグラビアを見ると、グッとくるものがありますね。テレビではなかなかクローズアップされないタレントさんの本音に迫れるのは、グラビアのいいところだなぁと痛感します。


佐藤 世間から抱かれているイメージを守ってあげることも大事だけど、いろんな見せ方が許されるグラビアだからこそ、現場のコミュニケーションで見えてきた“本当の彼女”を撮っておきたいんですよね。もし仮に、事務所NGが出て表に出せない没カットになったとしても、僕ができるのは、僕が目にした“彼女自身”を撮ることだけだから。


――そうですね。それに救われるタレントさんも多くいらっしゃいそうです。


佐藤 思い入れのあるグラビアというと、神室舞衣ちゃんの『至高のコスプレエロス6連発!』も外せないですね。デジタル写真集を見ていただければ分かるのですが、結構攻めた撮影に挑戦しているんですよ。特に以下は、冬の夜の寒い時期に、工場の水溜りに浸かって撮ったカット。現場で「ここ良いけど、さすがに寒い?」「えっ、いっちゃう?」って流れになって、本人が「やります」と。それで実現したんですよね。


神室舞衣『至高のコスプレエロス6連発!』より


――へぇ。コスプレがテーマですし、打ち合わせの時点でしっかりと作り込んだうえで撮影されたのかと思っていましたが、現場のノリに任せたシーンもあったんですね。


佐藤 全然ありましたよ。そもそも僕は、多少の余白を残して現場に行きたいタイプなので、決め決めに打ち合わせをすることはほとんどありません。仕事として、編集の方が求める絵を撮る意識は持つべきですけど、天気が良くても悪くても、ポジティブに捉えて撮っていけるのがグラビアだから。現場に行って、女の子と接して、どんな写真が撮れるか。そうやって、その場その場で流れていけるのがグラビアの楽しさじゃないですか。


――アクシデントさえもポジティブに変換して、流れに身を任せていけるグラビアの現場は、佐藤さんの性格に合っているのかもしれませんね。お話を聞いていると、どんな現場でも柔軟に、楽しみながら臨まれているのが伝わってきましたよ。と、最後に今後の展望をお聞きしたいのですが、やはり成り行きでという感じですか?


佐藤 そうですね(笑)。目指すべきカメラマン像があるというよりは、現場ごとに「こんな写真が撮れたんだ」を繰り返すことで、どんなカメラマンになっていくかを自分自身で楽しみたい気持ちがあります。ひょんなきっかけで写真と出会って人生が変わったように、きっとこの先も、人やモノとの出会いがどんどん自分を変えていくはず。それでもし仕事が減ったら……。まぁ、そうならないように頑張りますよ(笑)。


――となると今後の出会い次第では、グラビアとは違う方向に行く可能性も?


佐藤 はい。何なら、最近『SAUNA BROS.(サウナブロス)』というサウナ専門誌もやるようになったんですよ。現時点(2022年6月)で3号刊行されているのですが、その全てでメインカメラマンとして撮影に携わらせてもらっています。今度、その『SAUNA BROS.』から『ノスタルジックサウナ』というA4ワイドのハードカバーの写真集も発売予定なんですよ。全編サウナ施設の写真集。もちろん、全施設の撮影を僕が行いました。


――噂によると、佐藤さんは無類のサウナ好きなんだとか。趣味が高じましたね(笑)。


佐藤 これ、なかなか理解してもらえないかもしれませんが、サウナ施設って、めっちゃグラビアなんですよ。ここの施設は水の質感が良いとか、その場その場で良さを見つけて撮っていく感じは、グラビアを撮る感覚にとても似ているんです。実際、『SAUNA BROS.』の編集の方も「グラビアとしてサウナを撮ってください」とオーダーしてくださいましたしね。


――偶然なのか、気が合うのか。本コラムで岡本(武志)さんにお話を聞いたときも、同じような話をされていましたよ(笑)。「温泉は、グラビアを撮るのにうってつけのシチュエーションだ」って。


佐藤 あのね、おかもっちゃんも『SAUNA BROS.』をやっているんですよ(笑)。サウナで光を捉えるおかもっちゃんと、水の動きを撮る僕。好きな女性のタイプが真逆だって話もしましたが、サウナを撮るにしても、やっぱり僕らは、真逆なくらいアプローチの仕方が違うんですよね。


――同じグラビアカメラマンとして活動するかたわら、サウナ専門誌までご一緒にされているなんて!ほぼ同期の岡本さんとは、常に身近な場所にいらっしゃるんですね。


佐藤 正反対だからこそ、付き合いも長く続いているんだと思います(笑)。今でもたまに、ふたりでお茶をすることがあるんですよ。「最近どう?」なんて話をして。


――そうなんですね(笑)。ちなみに、サウナのほかにサーフィンもお好きだそうですけど、それらの趣味がグラビアに活きるなんてことはありますか?


佐藤 ありますよ。というのも僕、自然のものからの影響をかなり受けていて。例えば、飛行機の窓から見える空がとんでもないグラデーションになっていることってあるじゃないですか。青、オレンジ、紫……みたいな。普通、人間が考えてグラデーションを作るとしたら、そんな色の組み合わせにはならないと思うんですよ。でも自然は、人が思いつく発想を軽々と超えた景色をパァッと見せてくれる。衝撃ですよね。サーフィンで海に行っても、テントサウナをしに山に行っても、自然物が見せてくれる景観に圧倒されることは多々あります。本当、自然には敵わないですよね。


――なるほど。そのような感性をお持ちだから、その場その場の流れに身を委ねることを楽しめるのかもしれないですね。佐藤さんらしい気がします。


佐藤 どうなんでしょう。とはいえ 、サーフィンの話をするとスカしている感じがするし、サウナの話もそろそろ煙たがれる時期な気がするので、今は少し自重しています(笑)。



第11回ゲストは、ここ数年でグラビアオファーが急増中の写真家・前康輔さんが登場! 2022/7/8(金) 公開予定です。お楽しみに!!


佐藤佑一 作品のデジタル写真集一覧はコチラから!



佐藤佑一プロフィール

さとう・ゆういち ●カメラマン。1981年生まれ、東京都出身。

趣味=サウナ、サーフィン

カメラマン・渡辺達生氏に師事し、2010年に独立。

主な作品は、芹那『しるし』、桜庭ななみ『Birth』、都丸紗也華『とまるまる』、大友花恋『Karen』『Karen2』『Karen3』、戸田れい『TRENTE』、伊東紗冶子『SAYAKO』、新内眞衣『どこにいるの?』、鹿目凛『ぺろりん』、福原遥『はるかいろ』、伊原六花『rikka』『sáu hoa』、平祐奈『Comme le Soleil』、上西怜『水の温度』、薮下楓『さよならの余韻』、早川渚紗『なぎちぃ』、雪平莉左『とろける。』など。2005年に実母のヌードを撮影した作品『感情日記』でNikon juna21を受賞。

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