『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』唐木貴央 編 第二話「思い出を知る」 師匠に学んだ気遣いの姿勢「現場では、絶対に弱音は吐かない」

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第14回目のゲストは、鈴木ちなみの『ちなみに…』や小島瑠璃子の『こじるりっ!』、大原優乃の『ゆうのだけ』など、数々の写真集を手がけてきた唐木貴央氏が登場。女の子の“初めて(ファーストグラビアやファースト写真集)”を多く切り取ってきた彼が語る、グラビアの魅力とは。


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――カメラマン・根本好伸さんのアシスタント時代のお話を聞かせてください。特に学んだことといえば?


唐木 基本的な挨拶から、メリハリを持って仕事に取り組む姿勢まで。現場で必要なすべてを教わりました。些細なミスに関しては何も言われなくても、仕事が完了する前にタレントさんと仲良くお喋りしてしまい、後から呼び出されるなんてことはあったり。とにかく礼儀作法には厳しい方だったと思います。お恥ずかしながら、僕自身、その辺は教わらないと何も分かっていなかったので、今思い返してもありがたいご指導でしたね。


――確かに、技術を教わるより大事なことかもしれませんね。


唐木 技術面にしても、1年半ほど通った専門学校で学んだ知識しか持っていなかったので、現場ではあまり役に立ちませんでした。本来なら、カメラマンがスムーズに撮影できるよう、スタジオマンさんたちに指示を与えるのがアシスタントの仕事。でも僕はスタジオに勤務した経験がなかったので、指示を出すにも分からないことだらけで。何も知らない自分にもどかしさを感じつつも、そこにいるスタジオマンさんたちの名前を全員分覚えては、何でも覚えて帰るつもりで貪欲に質問していましたね。まっすぐ全力でぶつかっていれば何とかなる。そう信じてやっていくしかなかったです。


――根本さんの現場は、やはりグラビアがメインだったんでしょうか?


唐木 そうですね。たまにテレビ誌で、俳優さんやジャニーズのタレントさんを撮られることもありましたけど、仕事の9割がグラビアだったんじゃないかな。根本さんって、とにかく動き回りながら撮影されるんですよ。それでいて、確実にピントは逃さない。まだフィルムカメラの時代です。自分がカメラマンになってから、改めて当時の根本さんの写真集を見返すと、その技術力の高さに驚かされますよ。しかもその頃は、オーストラリアでの撮影を終えた後、そのままハワイへ行くなど、海外ロケが続くなんて普通の時代。わざわざ空港に現像所の人が来てくれて、フィルムを入れ替えてくれていたんですよ?今じゃ考えられないですよね(笑)。そんなハードスケジュールの中、弱気を吐かないどころか、オフの姿を全く見せない人でもありました。体力も相当だったと思います。


――アシスタントの前ですら気を抜かないなんて。プロフェッショナルを感じますね。


唐木 約3年のアシスタント生活を経て独立するとき、根本さんから言われたんです。「本屋に行けばあれだけ雑誌があるんだから大丈夫だ」と、背中を押していただいて。新しい雑誌がバンバン誕生していた2000年代前半の話です。多くは語らずとも、そういった気遣いや優しさから学ばせていただく部分は、大きな財産になりましたよ。


――唐木さんから感じる優しいオーラは、もともとの性格に加えて、根本さんの影響があるのかも。それで独立後は、どのようにしてお仕事を?


唐木 独立当初は全く仕事がなかったですよ。アシスタント時代にお世話になった編集さんからご祝儀としてお仕事をいただいたり、取材の撮影をお願いされたりはありましたけど、各社にブックを持って営業に行っても、なかなか響かずで。週プレもダメでしたね。ただ、ハッキリとは覚えていませんが、独立してわりとすぐの頃、『週刊少年マガジン』(講談社)で根本さんと一緒にモーニング娘。のグラビアを撮影したんですよね。根本さんが表紙を担当して、僕は中のソロ・コンビカットを担当する、みたいな。


――早くも師匠とお仕事ですか!?慣れた関係性とはいえ、お互いプロとして接するとなると緊張しますよね。


唐木 ここで下手を打ったら終わると思いました(笑)。ひとつ、今だから言える失敗があって。誌面の中に、メンバーふたりが棒にぶら下がっているカットがあったんですけど、棒を掴んでいる手の部分を切って撮影してしまっていたんですよね。「ここを写さなきゃ何をやっているか分からないだろ」と。プロとして叱られました。


――手が見えないと、ただバンザイしているだけにも見えてしまいますもんね。根本さんというと、モーニング娘。をはじめハロプロ(ハロー!プロジェクト)の写真集を多く手掛けているイメージがありますが、唐木さんも、やはり最初はハロプロの現場が多かったんですか?


唐木 そうですね。ちょうどモーニング娘。も人気絶頂期でしたし、大人数もので手が足りないと呼んでいただく機会は多かったように思います。それこそ最初にカメラマンとして携わらせてもらった写真集は『アロハロ!モーニング娘。さくら組&おとめ組』(キッズネット)でした。これまた根本さんと、それから福岡諒祠(ふくおかりょうじ)さんというカメラマンさんと3人での撮影で。ハワイ島で15人のメンバーをひたすら撮りまくるんです。もう、記憶がないほど必死でしたよ(笑)。


――あはは。根本さんとの現場、そんなに多かったんですね。


唐木 あとは、後藤真希さん主演の映画『青春ばかちん料理塾』、それと同時上映された石川梨華さん、藤本美貴さん主演の映画『17才 〜旅立ちのふたり〜』の撮影に同行して、スチールを担当させてもらったこともあります。『ヤングマガジン』の特別編集で、ビジュアルブックを出したんですよね。約2ヶ月間、映画チームに密着しての撮影でした。本が完成したときはうれしかったですけど、思い出したくないくらい厳しい現場でしたね。


――というと?


唐木 映画の現場なので、当然ながら、メインは映像の撮影。スチールはサブです。集中して映像を撮っている映画チームのみなさんからすれば、横でパシャパシャ写真を撮っている僕は邪魔でしかないんです。シャッターを切ると「うるさい!音が入る」と言われてしまう。仕事だから臆せず撮りますけど、かなりヒリヒリしていましたよ。


――映画チームの中、スチール担当の唐木さんは孤独だったんですね。


唐木 ただ不思議なことに、2ヶ月間ずーっと同じ現場にいると、自然と仲間意識が湧いてくるものなんですかね。だんだん、映画チームのみなさんが僕を受け入れようとしてくれているのが伝わってきたんですよ。僕も僕で、絶対に弱音を吐かないつもりで食らいついたのが良かったのかもしれません。いつしか「ここなら空いているよ」と、撮影スペースにまで気を遣ってくださるようになって、クランクアップ後の集合写真にも入れてもらえました。最後までやり切って良かったなーって。若くして、達成感を覚えた仕事でしたね。


唐木貴央 編・第三話は10/21(金)公開予定! 駆け出し時代を共にした編集者と掴んだ大きなチャンス。「鈴木ちなみちゃんのグラビアは、僕らスタッフ含め、みんなを幸せにした」


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唐木貴央プロフィール

とうのき・たかお ●カメラマン。1977年生まれ、兵庫県出身。

趣味=美術鑑賞

カメラマン・根本好伸氏に師事し、2002年に独立。

主な作品は、『アロハロ!モーニング娘。さくら組&おとめ組写真集』(根本好伸氏、福岡諒祠氏と共作)、鈴木ちなみ『ちなみに…。』、小島瑠璃子『こじるりっ!』、志田友美『YUUMI』、片山萌美『人魚』、秋元真夏『真夏の気圧配置』、橋本梨菜『RINA × BLACK』、大原優乃『ゆうのだけ』、京佳『きょんにゅー』、大和田南那『りすたあと』、豊田ルナ『月-Luna-』、Liyuu『鼓動』、竹内詩乃『内緒』など。

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