『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』西田幸樹 編 第四話「おすすめを知る」 今後の展望はセブンサミッツ!? 「58歳でエベレストに登頂しました」

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第17回目のゲストは、80年代後半よりグラビアの第一線で活躍を続ける西田幸樹氏が登場。週プレでは、2022年に14年ぶりの再登場を果たした女優・平田裕香(デジタル写真集『KENAGE』)などを撮影している。10代のアイドルから、ヌードグラビアまで。美しい光で女性を撮り続ける彼なりのロジックを聞いた。


西田幸樹作品のデジタル写真集一覧はコチラから!



——「週プレ グラジャパ!」からリリースされている作品の中だと、特に2022年3月に14年ぶりに週プレのグラビアにカムバックした平田裕香さん(デジタル写真集『KENAGE』)が印象的でした。


平田裕香『KENAGE』


西田 僕自身、そもそも週プレでグラビアを撮らせてもらうのは、裕香ちゃんがかなり久々でした。裕香ちゃんとは20年以上前からの知り合いで、ときどき親しい編集者の方と三人で食事に行かせてもらうこともあるくらいで。お仕事でご一緒するのは、それこそ10年以上ぶりだったと思うけど、一生懸命なところは相変わらずで、どこか懐かしい気持ちになりましたね(笑)。


——本当、スゴくお綺麗でした。


西田 僕が知っている以上に、大人の魅力に溢れていたのには驚きましたよ。年齢を重ねたことで、また新しい美しさが開花したというか。昔を知っているからこそ、こうして進化した姿をまた撮らせてもらえたのは嬉しかったし、楽しかったですね。


——個人的には、週プレで久々に西田さんの撮り下ろしが見られて嬉しかったです! ちなみに、毎回最後に「今後の展望」をお聞きしているのですが、西田さんは、もともと絵を描くのがお好きだったという話じゃないですか。カメラマンへの道は、受かった大学がたまたま写真学科だったことから始まったかと思うのですが、今になって改めて「絵の方に行っていたら……」と考える瞬間はありますか?


西田 正直、ありますよ。というのも、子どもの頃からものづくりも大好きで、カメラマンになった今も、趣味で身近にある新聞紙や雑誌を切り貼りして絵を描いたり、キャンプで拾った木の根っこでオブジェのようなものを作ったりしているんですね。実際、それらひとつひとつを作るのには、相当な時間がかかります。中には、半年以上かかったものも……。手先の器用さなんかより、体力と根気強さの方が重要と言っても過言じゃないです。でも、不思議と全く苦にならないんですよね。そこに在るものをカシャっと撮るだけで一応は完結してしまう写真とは正反対の創作が、むしろ楽しくて仕方がない(笑)。まぁ、それを仕事にするとなると、なかなか厳しいんだろうとも感じますがね。


実際に西田氏が制作したという恐竜の模型。新聞紙と粘土で作られているのだとか。西田氏の後ろには、他にも趣味で作ったという工芸品が飾られている。


——ど、どれもクオリティがスゴすぎます! もし西田さんの工芸品展があれば、是非観に行きたいくらいですよ。


西田 ははは。そうですかね(笑)。まぁ、写真にしろ工芸品にしろ、誰かに観てもらう環境がないと“ゼロ”だとは思います。好きに写真を撮って、好きにものを作って、部屋の中で「おれ、天才だな」と自画自賛するだけでは、存在意義が薄れるといいますか。だからこそ「今後の展望」を答えるとすれば、絵や工芸品はともかく、カメラマンとして、いつまでも求めていただける存在で在り続けたいってところですかね。そのためには、時代に応じた写真を撮っていく必要がありますし、最近は、若いカメラマンさんから刺激を受けることも多いですよ。


——独立当初と状況は違うにしても、たくさんいらっしゃるカメラマンさんの中でいかにして生き残るかを考え、いろんな方の写真を見て自身に活かされているところは、ずっとブレがないと。


西田 そうかもしれませんね。写真にも流行り廃りがありますから、常に感覚はアップデートしていかないとな、と思っていますよ。あともうひとつ、個人的なところで展望を語らせていただくなら、セブンサミッツを達成したいですね。


——セブンサミッツって、世界七大陸最高峰のことですか?


西田 そうです。僕、山登りが趣味でして(笑)。現時点でセブンサミッツは、エベレストと南極にあるヴィンソン・マシフ、アフリカのキリマンジャロの3つ登頂しています。北米のデナリ(マッキンリー)にも挑戦したのですが、まだ登り切れてはいなくて。今年65歳になるので、体力のあるうちに達成したいなと目論んでおります。


——山登りが趣味といっても、エベレストは次元が違いすぎますよ! ちなみに、そういった世界の山々を登られるようになったきっかけは何だったんです?


西田 50歳を過ぎた頃、カミさんに「生エベレストを見てみたい」と言われ「じゃあ、一緒に行ってみようか」と。僕も最初は「果たして素人が登れるものなのだろうか?」と思いましたけど、案外、登頂している人も少なくないことが分かって。もちろん、いきなりは無謀なので、5,000メートル、6,000メートル、8,000メートル……と、低い山を順に経験してから挑むんですけどね。


——奥さまの願いにお付き合いされる西田さん、優しいですね。


西田 いやいや、カミさんが言うことに「ノー」と言わないのが僕の主義なので。あるときは、カミさんに誘われて五街道を歩きましたし(笑)。


——やっぱり優しい! と、写真の話から逸れてしまいましたがせっかくなので……。実際、エベレストに登頂されたときは、どんな気持ちになられたんでしょう。


西田 エベレストに登頂したのは58歳の頃でした。トータルで50日くらいかかったのかな? 率直に「もう登らなくていいんだ」って思った記憶があります(笑)。下りの方が危険と言いますし「無事に生きて帰れるだろうか?」といった不安もありつつ。ただ何というか、本当に神様がいても不思議じゃない景色が広がっていましたね。どれほど周りを見渡しても、自分が立っているところより高いものがないんですから。あ、ちゃんと登頂証明書もありますよ?


——おおお、スゴい。


西田 「もうダメだ」と諦めたくなっても、足を動かされなければ一向にベースキャンプ(登山中の寝泊まりや物資補給を行なう拠点となる場所)には辿り着けない。言葉で表現する以上に過酷だし、雪崩に遭うなど何度か身の危険を感じたこともありますが、それでもまた、次の山に登りたくなってしまうんですよね(笑)。


——山登りと写真に共通点があるとすれば……?


西田 あー、どうなんだろう。まぁ、難しい現場ほど燃える傾向があるのは、山に向かう精神と近い部分があるのかな、とは思いますね。って、すみませんね、山の話ばかり。


——とんでもないです。貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました!


第18回ゲストは、昨年よりグラビアオファーが急増中(!?)の東京祐氏が登場! 2023/2/3(金) 公開予定です。お楽しみに!!


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西田幸樹プロフィール

にしだ・こうき ●カメラマン。1958年生まれ、熊本県出身。

趣味=趣味 山行、街道巡り、工作

写真家・横木安良夫氏のアシスタントを経て、1986年に独立。

主な作品は、南粧子『マーマレイドの午後』、前田敦子『前田敦子』、葵つかさ『葵つかさ』、鈴木優香『だまされてみる?』など。鈴木愛理を筆頭に、真野恵里菜、鞘師里保、小田さくら、牧野真莉愛、山﨑夢羽など、ハロー!プロジェクトの写真集も多く手掛けるほか、2011年ごろから『週刊ポスト』では、素性を一切明かしていない美女を取り下ろす「謎の美女」シリーズを撮影。YURI『愛のアルバム』、祥子『愛にゆく人』などの写真集をリリースした。また2021年にはAV事務所・エイトマンの15周年記念企画「8woman」にて8人のモデルを撮影。東京渋谷にあるギャラリー・ルデコで写真展を開催した。翌年にも同様の写真展を開催し話題となった。

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