『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』東京祐 編 第二話「思い出を知る」 写真が楽しくて仕方がなかったスタジオマン時代「人の撮影を見ていると、自分が撮りたくてイライラしていたほどです(笑)」

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第18回目のゲストは、2023年2月14日発売の菊地姫奈セカンド写真集『moment』でカメラマンを務める東京祐氏が登場! 週プレでは、昨年の#ババババンビ・岸みゆのグラビア(デジタル写真集『もっともっと。』)で初めて撮り下ろしが掲載されて以降、オファーが急増中。新進気鋭の若手カメラマンが語る、グラビアを撮る面白さとは。


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——大学進学をきっかけに、北海道から上京。バイトをしては、バンド活動をしたり、レコード屋に行ったり。人との出会いも増え、かなり充実されていたようですが、将来について考え始めたのはいつ頃だったんでしょうか?


 就職活動のときですね。普通に面接を受けて、ひとつアパレルの会社から内定をもらっていたんですが、よくよく考えたら「人が作った服を売りたくないな」って気持ちになってしまって(笑)。自分の技術や感性を活かして“作る方”の仕事がしたいなと。改めて、特技と言えるものをバーっと書き出してみたら、その中のひとつに「写真を撮ること」があったんです。そのとき初めて、カメラマンという職業を意識しました。それまでは、写真を撮ること自体に特別な興味はなかったですから。


——中学生の頃からバンド活動をされていたとおっしゃっていましたけど(一話参照)、音楽に関する仕事に就こうとは思われなかったんですか?


 バンドで食べていくことには、正直、自信がなかったです。知り過ぎちゃっていたんですよ。音楽業界で活躍しているスゴい才能の数々を。「あの人たちと同じフィールドで戦えるわけがない」と、夢にすら思いませんでした。逆に、そこでカメラマンになろうと思えたのは、当時の私が写真について無知だったからでしょうね。当時は、アラーキー(荒木経惟)や篠山紀信さん、あるいは川内倫子さんなど、有名な作家さんの名前くらいしか知らなかったので。って、知らない業界に、何の武器も持たず飛び込んでいくなんて、ただのバカですよね(笑)。


——いやいや、分かりますよ。知り過ぎていないからこそ挑戦できることもありますよね。


 それで、カメラマンになるにはスタジオマンから始めるのが一般的だと知り、とりあえず都内のスタジオをいくつか受けました。スタジオごとの特徴も何も知らなかったし、どこでも良かったんですよね。結果的に、いちばん早くに合否が出たアートプラザ六本木に入社しました。大学を出させてもらったにもかかわらず、内定を蹴って将来の保証のない職業に就く選択を許してくれた親のことを思うと、迷っている暇もなかったです。


——ただ、もともと写真はバンド活動を記録するために撮られていただけでしたよね。スタジオマンを経て、写真への興味に変化は?


 知れば知るほど、写真が好きになりました。私がスタジオマンになった頃、ちょうどインスタグラムが流行り始めたんですよ。街中で声かけをするほか、インスタを通じてモデルさんを探しては、毎日のように作品撮りをして、それをアップし続けていました。カットモデルを探している美容師さんとも仲良くなって、撮影のときはヘアメイクをお願いしたり、ときにかわいいモデルさんを紹介してもらったりして。完全に、撮る楽しさに目覚めましたね。逆に、スタジオで人の撮影を手伝っている時間は、自分が撮りたくてイライラしていたほどです(笑)。生意気にも「下手くそだなー」と思いながら、モニターを眺めていました。自分がカメラマンになってから、淡々とした撮影にも技術がいるんだなと、そのスゴさを理解しましたけど。


——そうだったんですね(笑)。


 ちょっとトガった発言をしてしまいましたが、もちろん、見ていて楽しい現場も多くありました。特に印象的だったのは、荒木経惟さん。毎週のように撮りにいらしていたんですけど、私、一年目の頃から荒木さんの担当みたいな感じで、何度も現場を手伝わせていただいたんですよ。


——す、スゴい経験ですね! なぜ東さんが荒木さんの担当に?


 基本的に、いちばん仕事のデキる人が荒木さんの担当なんですよ。自分で言うのも何ですが、いちばん仕事がデキたから、継続的につかせてもらえたというか(笑)。


——なるほど。さすがですね。実際、荒木さんの現場からは学ぶことも多そうです。


 いい写真が撮れる現場には、いい空気が流れているんだなと。技術的なこと以上に、荒木さんの言動や佇まいが、写真の魅力にそのまま表れているのを感じましたね。感覚的な話で分かりづらいかもしれませんが、私も写真を撮るときは、周りに「この人、いい写真を撮りそうだな」と思われるような空気感を纏いたいなぁと思ったものです。具体的に何かを学んだというよりは、間接的に、写真を撮る姿勢そのものを教えていただいた感覚がありましたね。


——写真は、撮る側の視点で切り取られるものですからね。“撮り方”よりも“何を見る人なのか”が重要なのは、何となく分かる気がします。


 デジタルカメラの設定に「AV(絞り優先)」「TV(シャッター優先)」というモードがあって。荒木さんが珍しく現場にコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を持ってこられたとき、「この“AV”ってボタンを押せばAVが見られるのか?」なんて会話をした覚えもあります。くだらないですよね(笑)。そういった人柄も含めて、大好きでした。スタジオには3年間ほど勤務していましたが、その短い間で、何度もお目にかかれて光栄でしたよ。


——貴重なお話をありがとうございました。スタジオを辞められてからは?


 誰のアシスタントにつくこともなく、カメラマンとして独立しました。というのも、スタジオマン時代にひたすら行なっていた作品撮りをもとに、年に1〜3回のスパンで写真展をやるようにしていたんです。ポートレートにしろ、風景写真にしろ、今見返すと、「よくこれで展示できたな」と思うようなクオリティの写真ばかりなんですけど、それでも、いま自分が撮っている写真を見てもらいたい気持ちが先行していたんでしょうね。何の実績もなかったものの、独立後すぐに、その写真展に来てくださっていたライターさんから初仕事をいただけたので、もしかしたらこのまま何とかやっていけるかもしれないぞ、と。そんな流れでした。


——年に1〜3回!? スタジオ勤務の合間にそれだけ作品撮りや写真展をされていたと考えると、結構な高頻度ですよね。プロになられる前から、それほど積極的に作品発表の場を設けられていたとは……。


 むしろ、プロになる前だからこそ、自ら写真を見せられる場所を作っていく必要があったんです。そう思うと、駆け出しの頃にインスタグラムが流行ったのは相当ラッキーでしたね。写真展よりも気軽に、全世界の人に向けて自分の写真を発信できたんですから。その中で積極的に写真展をやっていたのは、わざわざ私の写真を見に足を運んできてくださった方から直接感想をお聞きできるのが嬉しかったから。インスタで「いいね」をもらうよりも、断然快感だったんですよね。


——確かに、それだけ継続的に写真展をやられていたら、回を重ねるごとに来場してくれる方が増えたり、繰り返し来てくれる方がいらっしゃったりと、目に見える反応がモチベーションに繋がりそうです。


 そうそう。次の展示が今回を下回る出来だったら最悪じゃないですか。「素敵な写真ですね」と言っていただくたびに、「次はもっといい写真を」と思い続けていたら、どんどん手応えも感じるようになって。まぁ、もとが下手すぎたので、やればやるほど上手くなる一方だったんでしょうね。写真を撮るのがとにかく楽しかったし。今だと、なかなかそこまでの手応えは感じられないと思います(笑)。


——ちなみに、写真展に来ていたライターさんからいただいた“独立後最初の仕事”というのは?


 ファッション誌『ViVi』の特集ページで、マギーさん、河北麻友子さん、玉城ティナさん、八木アリサさんの私服姿を、それぞれに合ったシチュエーションで撮るという仕事でしたね。仕事の進め方とか、打ち合わせの仕方とか、何も分かっていなかったけど、分からないなりに自分の感覚を信じてやれた気がします。楽しかったですね。


東京祐 編・第三話は2/17(金)公開予定! 昨年よりグラビアのオファーが急増! 撮る楽しさ、魅力を語る「グラビアって疲れるんですよ。だから、楽しいんです」


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東京祐プロフィール

あずま・きょうすけ ●カメラマン。1989年生まれ、北海道出身。

趣味=ゲーム、アニメ鑑賞、キャンプ、スノボ、料理、愛犬の散歩など

2023年2月14日に発売される菊地姫奈セカンド写真集「moment」を手掛けたほか、主な作品は、上白石萌歌「まばたき」、梅澤美波「夢の近く」、山田杏奈「BLUE」、新内眞衣「夜が明けたら」、松下玲緒菜「in the seasons」、守屋麗奈「笑顔のグー、チョキ、パー」、三品瑠香「ひととき」、秋元真夏「振り返れば、乃木坂」など。プライベートワークとして、女優・モデルなどのポートレートを掲載するWeb Magazine「人色」を月1で更新中。

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