『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』カノウリョウマ 編 第三話「思い出を知る」 独立後、間もなくしてあの有名ロックシンガーを撮影!?「例え採用されなくても、自分の意見を言うのが大事」

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第19回目のゲストは、2023年3月22日発売の『えなこカレンダーブック 2023.4~2024.3』でカメラマンを務めるカノウリョウマ氏が登場。明るく現場を盛り上げるカメラマン・LUCKMAN氏に師事し、現在はグラビアを初め、ポートレート写真を中心に活動している彼が語る、仕事、写真への思いとは。


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——樂滿直城(LUCKMAN)さんのアシスタントを卒業された後は、どのようにしてお仕事を?


カノウ アシスタント時代の繋がりをもとに、とにかく営業に行きまくりました。全く仕事には繋がらなかったですけどね。独立当初は、月に1〜2つ仕事があれば良い方でした。


——では、最初のうちはアルバイトで生活費をまかなわれていたり?


カノウ そうですね。実家に住んでいたので生活に困ることはなかったですけど、写真のプリント代もあるし、お金は貯めておきたいと思い、一度、治験のバイトをやったことがあります。新しい薬品の性能を確かめる被験者になる仕事ですね。何もないワンルームに20人ほどの被験者が集められて、管理された生活を送るんです。4泊5日を2回やって、15万円ほど報酬がもらえたのかな。何もしなくていいとはいえ、結構キツかったですよ。出される食事は質素だし、おかわりなんて当然できないし、外に出歩くことも出来ませんから。でも、2回目の治験では、なるべく楽しく過ごそうと、他の被験者の方に声をかけて人狼ゲームをやった思い出があります(笑)。あとは、東京ビッグサイトのイベント会場設営の日雇いバイトとか。いろいろやっていましたね。


——治験で人狼ゲームですか(笑)。お辛い環境でも楽しく過ごせる案を考えられるのは良いですね。


カノウ いやぁ、そうはいっても仕事がない時期はかなり心が死んでいましたよ。やる気はあるのに、仕事が来ない。もう、夜も眠れなかったほどです。実家に住まわせてもらっていた分、両親に対する申し訳なさもありました。ただ、そんな生活を送っていたときに、『週刊少年マガジン』の担当編集さんから、とあるお仕事の依頼を受けたんです。その編集さんは、僕よりひとつ年上の方で、わりと趣味も合って。ブックをお見せしに行ったときも、良い感じに盛り上がったんですよね。「ぜひ、同世代で頑張っている若手のカメラマンにお願いしたい」と、いただいたお仕事というのが、ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんの撮影でした。


——え、えぇ〜!


カノウ 当時新連載だった漫画『この剣が月を斬る』の作者・堀内厚徳さんが甲本さんの大ファンで、誌面で対談企画をすることになったんです。僕自身、まだ仕事の回数が2桁にも満たない時期でした。撮影時間も短かったし、めちゃくちゃ緊張しましたね。


——それは緊張しますよね……。


カノウ それでも、僕なりに「普通の取材ページにはしたくない」とライティングを工夫して、爪痕を残す努力はしました。今思い返しても、スゴく貴重な体験でしたね。忘れられない現場のひとつです。


——お話を聞いているだけでドキドキしましたよ。いわゆる女のコのグラビアを撮られたのは、何が最初だったんですか?


カノウ 厳密にはグラビアではないですが、独立後いちばん最初にお受けしたお仕事は、ファッションブランド「KIKS TYO」がグラビアアイドルの女の子とコラボした「KIKS GIRLS TEE」というTシャツシリーズの撮影でした。モデルは石川恋ちゃん。アシスタント時代、最後のロケでお世話になった恋ちゃんのご厚意でお仕事を頂いたのですが、まだシリーズが始まって間もない頃だったために、かなり手探りな現場だったのを覚えています。一応、ここでも僕なりに工夫したことがあって。「KIKS TYO」のロゴを大量にプリントして、白ホリのスタジオの壁にバーっと貼り付けて撮影したんですよね。


——「KIKS GIRLS TEE」シリーズは、最近、週プレとも定期的にコラボしています。その第一弾は、カノウさんが撮影されていたんですね。


カノウ ちゃんとしたページもののグラビアは、週プレが最初でした。「あの娘の裸」という不定期シリーズのグラビアで、当時、まだデビューしたてだったAV女優の水川スミレさん、彩音舞衣さんのヌードを、それぞれ撮らせてもらったんですよね(2016年4月18日発売『週刊プレイボーイNo.18』に掲載)。普通のグラビアというよりは、付録DVDに収録されるムービーがメインの企画で。誌面用に掲載された一人あたり2ページの撮り下ろしを担当させてもらいました。独立してまだ1ヶ月も経っていない頃だったかな。仕事はなかったものの、意外と週プレデビューは早いんですよ、僕。


——初めて撮影された誌面のグラビアがヌードだったとは。また緊張しそうなお仕事ですね。


カノウ めちゃくちゃ緊張しましたよ。頭で考えるより心が反応する瞬間を追いかけて、必死でシャッターを切っていました。実際に、自分でグラビアを撮らせていただくようになって気付いたのは、喋りながら撮影する難しさ。適当に話すわけにもいかないし、事前に考えてきた質問をぶつけるのも何か違うし……。樂滿さんは、いとも簡単そうに、楽しそうにトークと撮影を両立されていましたが、改めて、そのスゴさを実感しましたね。


——その中で、具体的にお仕事が増えるキッカケとなった撮影は何だったんでしょう?


カノウ うーん。何かひとつの現場がキッカケで劇的に仕事が増えたというよりは、コツコツやってきたことが今に繋がっているという感じですね。独立当初は、アシスタント時代のご縁で仕事をいただいていましたけど、それだけでは続かないと分かっていたので、毎回どの現場でも、自分なりの主張を写真でアプローチする意識で挑んでいたんです。例えば、ダメと言われそうなことでも、現場では果敢に意見を出してみるとか。もし「ダメ」と言われてしまっても、そこで意見を出すか出さないかは大きな違いですよね。そういう意思が、現場にいた編集さんに伝わったのか、少しずつ、お仕事をいただく頻度も増えていきましたね。


——甲本ヒロトさんの現場でも、石川恋さんの現場でも、カノウさんなりの工夫をされたと話されていましたね。確かに、そこで自身の意見をぶつけないのなら、カノウさんに撮ってもらう意味がないとも言える気がします。


カノウ そういう意味では、むしろ撮影よりも編集さんとの打ち合わせの方が神経を使います(笑)。一人の女の子を撮るにあたって、カメラマン目線の意見を必ず求められるわけですから。「こいつはどんなプレゼンをするのか?」と試されているような気持ちになりますね。意見を述べた結果、それが採用されなくても、そういう意見を発したという事実が大事。今でも「これを言って大丈夫かな?」と不安になる場面は多々ありますが、何か自分なりの意見を発するか、言葉にしなくても写真でアプローチする意識は常に持っていますね。


カノウリョウマ 編・最終話は3/31(金)公開予定! グラジャパ!の中で特に思い入れがあるのは、昨年、YJで何度も表紙を飾ったあのモデル……!


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カノウリョウマプロフィール

かのう・りょうま ●カメラマン。1988年生まれ、東京都出身。

趣味=サウナ、猫と遊ぶこと

カメラマン・LUCKMAN(樂滿直城)氏に師事し、2016年に独立。

2023年3月22日発売の「えなこカレンダーブック 2023.4~2024.3」を手掛けているほか、宮内凛「凛と」、松田美里「となりがいい」、澄田綾乃「PURITY 」、本郷柚巴「2nd写真集(仮)」、金子隼也「Be Myself」などの写真集を撮影。スタジオマン時代、アシスタント時代に、第5回、第10回写真「1_wall」展にて入選。プライベートワークに、キューバで撮影した写真を編纂した「TRINIDAD(トリニダード)」がある(2020年12月に高円寺「GALLERY33」で同タイトルの個展を開催した)。

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