『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』中山雅文 編 最終話「おすすめを知る」 グラビアを広めるためのチャレンジを続けたい。

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。


第12回目のゲストは、前田敦子の写真集『ATSUKO』(前代未聞!3冊連続リリース作の完結編)や新人時代の馬場ふみか(デジタル写真集『1stグラビアセンセーション!』など)を撮影した中山雅文氏が登場。幅広い人脈を持つ生き方や、多くの編集者から愛され続ける理由を探る。


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――ここまでお話しさせていただいて感じるのは、中山さんの人当たりの良さ。明るくて、気さくで、気遣いも感じられて。そんな中山さんの現場だったら、あまりグラビアに慣れていない女の子でも、気構えずに挑めるんじゃないかと思いましたよ。


中山 本当ですか?ありがとうございます。僕は、例え相手が誰であろうと、人対人で仕事をしたいと考えているんですよね。「事務所がどこだから」「アイドルグループのメンバーだから」なんて、そんなのただの偶然じゃないですか。誰が若手とか、誰が偉いとか、現場では関係ありません。目の前にいるその子を、ひとりの女性として撮る。それを自由にできるのがグラビアですから。


――おっしゃる通り、グループでは端にいる子が唯一無二のヒロインになれる場所がグラビアですもんね。


中山 ただ以前、とある編集さんにこう言われたんですよ。「中山は編集者の経験があるから、現場の空気に調子を合わせようとするところがある。カメラマンはバランサーじゃいけない。もっと突き抜けないとダメだよ」って。正直、人に気を遣っているつもりもなければ、調子を合わせにいってもいないんですけど。無意識のうちに、アルバイト編集者時代の癖が出ちゃっているんでしょうね。


――撮影を円滑に進めるために現場をサポートするのは編集者の役割。カメラマンは、周りに気を遣わず、撮りたい写真を撮ってくれってことですよね。


中山 そうそう。まぁ、どうしようもないので、今となっては、このキャラクターを長所と捉えて開き直っていますよ(笑)。それに僕、写真の良し悪しにプライベートが影響するタイプなんですね。人とたくさん会ったり、海でサーフィンをしたりして、プライベートが充実しているときは自ずと良い写真が撮れるのに、調子が悪いときは共倒れなんです。本当ダメですよねぇ〜。その点、同世代のカメラマンである(唐木)貴央ちゃんはスゴいですよ。安定感抜群ですから。


――でも、そんな中山さんだから撮れる写真もあるわけじゃないですか。中山さんの明るい人柄によって緊張が解れた女の子も、きっと多いはずですよ。


中山 あはは。確かに、プライベートが充実しているときの僕は結構良いですよ。貴央ちゃんが撮れないような良い写真を、軽くポーンっと撮っちゃうので。と、自分をフォローしておきます(笑)。


――プライベート、充実させておいてください!ちなみに、週プレ グラジャパ!にある作品の中で、中山さんがおすすめしたいデジタル写真集はどれになりますか?


中山 前話でお話しさせていただいた作品もおすすめですが、他をあげるとすれば、馬場ふみかちゃんの『極限』ですね。雪の降りしきる北海道での撮影は、文字通り“極限”の寒さで。なかなか過酷な現場でしたね。


――まだデビュー間もない頃の馬場さんの作品ですね。グラジャパ!の紹介文によると、このとき馬場さんは風邪気味で、「鼻セレブ」の箱を片時も手放せない状態だったとか?


中山 そうでした(笑)。特にこの温泉シーンは、足先が冷えすぎて大変だったんですよ。「ここでは5枚だけね」と、撮る枚数を決めて撮影したのを覚えています。無理させて申し訳なかったけど、風邪気味の馬場ちゃんも、気合いを入れて頑張ってくれていましたね。


馬場ふみか『極限』より


――良い表情をしていますね。風邪気味だったとは信じられないほどですよ。


中山 あとは、大和田南那ちゃんの『フルボディ』、寒川綾奈さんの『32歳でグラビアデビュー。正直、好きです!』もおすすめです。両作とも光と影にこだわった作品となっていて、普段の彼女たち以上に大人っぽい表情が撮れた気がしているんです。ぜひ、チェックしてもらいたいですね。


(左)大和田南那『フルボディ』、(右)寒川綾奈『32歳でグラビアデビュー。正直、好きです!』より


――中山さんがお好きな“生っぽさ”を感じます。お二方ともナチュラルな雰囲気で素敵ですね。


中山 そうだ!もうインタビューも終わりに差し掛かる頃だろうから、最近あった僕の話をさせてもらっても良いですか?


――えっ?ど、どうぞ。


中山 あのー、先日、昔からの知り合いで、定期的にお会いしている31歳の男の子に説教されたんですよ。「最近の中山さん、ダメっすよ。何かにチャレンジしてますか?」って。現在46歳。今後もカメラマンとして活動を続けていくためには、まだまだチャレンジ精神を持っていないといけないなと。彼の言葉がみょうに響いたんですよね。表に出ていないだけで、彼に言われる前からいろいろチャレンジしてはいるんですけど(笑)。


――チャレンジ、ですか。例えばどういう?


中山 具体的にはまだ定まっていないのですが、まずは、日本独自のグラビア文化を海外に広げたいんですよね。この前、韓国人の女の子のグラビアを撮らせてもらったんですよ。国籍は違っても、グラビアを撮る上で人と向き合う行為に変わりはない。僕自身、やっぱりグラビアが好きだから、国を超えてでも、できる限り多くの人に見てもらいたい欲が強くあるんですよね。


――なるほど。海外生活を送られていた中山さんらしい発想かもしれませんね。


中山 また、絶えず人を撮り続けるのは大前提として、撮った作品をどうみなさんにお見せしていくか、その可能性を探るのも大事です。今はまだ紙の雑誌が生きているとはいえ、時代は流れていきますから。そんなことを考えるようになったきっかけのひとつに、今年1月に渋谷パルコで開催させていただいた、デジタルアーティストCase-K Moonshine(月光恵亮)さんとのコラボ展示があります。月光さんは、BOØWYやリンドバーグなどを手掛け、80〜90年代のJ-ROCK界を盛り上げた元・音楽プロデューサー。御年70歳です。耳が聞こえなったことからデジタルアーティストに転向されたそうで、ご縁あって一緒に個展を開くことになったのですが、とにかくセンスがお若いんですよ。気になる方はぜひ、彼の絵を調べてみてください。70歳のおじいちゃんが描いたとは思えないイラストにビックリされると思います。


――元・名音楽プロデューサーがデジタルで絵を描かれているという話だけでも、そのスゴさが伝わるような気がします。それにしても、中山さんの人脈は本当に幅広いですね。


中山 人脈は、独立したばかりの頃から僕が積み上げてきた揺るがない武器でもあります。せっかくなら、その繋がりを活かして、いろんなジャンルの表現者たちとコラボするのも面白そうだなって。月光さんとのコラボ展示を経て、改めて実感しました。今も、友人のCGアーティストとのコラボ企画を進めているところです。見せ方が変われば見てくれる人も変わる。こういった活動が、結果的に海外に発展する可能性もありますし、とにかく今は、人と関わりながら模索するのを楽しんでいます。


――あらゆるジャンルの方と接点があるからか、視野も広いですよね。グラビアって、ある種、特定のファンによって支えられている閉じた世界でもあると思うんですけど、そこを積極的に広げようとされているというか。


中山 一般的には「グラビア=エロ」と認知されていますよね。確かにエロさも重要ですが、僕は、エロさ以上に人を撮るのがグラビアだと思っているので、「グラビア」って言葉だけで毛嫌いされたくないんですよね。語源はグラビア印刷から来ているわけだし、実際、グラビアの定義はとても曖昧。逆にいえば、自由な世界でもあるんです。可能性を探らないなんて、もったいないですよ。


――最後に希望のあるお話が聞けて大満足です。毎回、今後の展望をお聞きしてインタビューを締めているのですが、中山さんの回答は「グラビアの可能性を広げたい」ってことで良いですかね?


中山 あはは。聞かれる前に勝手に答えてしまっていましたね。おしゃべり好きですみません(笑)。それでお願いします!


第13回ゲストは、初水着から現在まで。週プレで井桁弘恵を撮り続けている笠井爾示氏が登場! 2022/9/2(金) 公開予定です。お楽しみに!!


中山雅文 作品のデジタル写真集一覧はコチラから!




中山雅文プロフィール

なかやま・まさふみ ●カメラマン。1975年生まれ、東京都出身。

趣味=サーフィン

カメラマン・久保田昭人氏に師事し、2003年に独立。

主な作品は、本仮屋ユイカ『私。』、小芝風花『F』、伊原六花『R22』、森日菜美『もりだくさん』、ぱんちゃん璃奈『虹色ぱんちゃん』、上西恵『そのまんま。』、HARUKA『はるか』、大島優子『優子のありえない日常』、前田敦子『ATSUKO』、島崎遥香『ぱるる、困る』、杉本有美『うち』、吉木りさ『Heaven』『RISA~Te amo~』『OKOLE』、脊山麻理子『SEYAMA』、他多数。

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