2022年12月23日 取材・文/とり
あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。
第16回目のゲストは、女の子のポートレートを中心に活動している写真家の田口まき氏。週プレでは、奥山かずさ『癒やし系ボディに仕上げました。』やゆきぽよ(木村有希)『サバイバル~ゆきぽよ的ギャルキャンプ~』などの撮影を担当。女の子への愛溢れるルーツや、グラビアへの向き合い方について話を聞いた。
——商業誌でグラビアを撮る際は、男性読者への意識があるとお聞きしましたが、田口さん自身は、女の子のどういったところに魅力を感じているんでしょうか。
田口 どの女の子に対しても「カッコよくて好き」って気持ちがありますね。“あざとかわいい女の子”が自然と繰り出すあざとかわいい振る舞いは、その子のカッコいい部分でもあるというか。グラビアにしても、パンツが見えているんじゃなくて、パンツを見せているんだぞ! みたいな感覚がどこかにあるんですよね。って、あまり言い過ぎると夢がなくなっちゃいますけど(笑)。
——あはは。でも分かります。グラビアを見ていると、かわいい仕草や色っぽい表情で自身を魅力的に表現している女の子たちの姿が、純粋にカッコよく映りますから。それは、自分も同じ女性であるからこそのリスペクトでもある気がします。
田口 そうそう。ベースには、女の子への尊敬の念があるんですよね。ただ、私が感じる“あざとかわいい女の子”のカッコいい部分をカッコいいままに表現してしまうと、グラビア誌のファンの方にはウケが悪くなってしまうんじゃないかな? という遠慮のような気持ちは常にあります。せっかく雑誌に出るのなら、タレントさんとしても、読者の方にいいと思ってもらえる作品を残したいだろうし、そこは私も仕事として、優先すべきところだと考えていますね。その一方で、写真表現としては、極端にカッコいいに振り切ったグラビアがあってもいいじゃないですか。だから今後は、仕事以外の現場で、作品撮りとして、そういう撮影にも取り組んでみたいなと思っています。
——田口さんの視点で切り取られたカッコいい女の子のグラビア、期待しています! では、定番の質問に移ります。「週プレ グラジャパ!」からリリースされている作品の中で、特に読者の方におすすめしたい作品を教えていただけますか?
田口 吉田あかりちゃんの『自分史上、今一番初々しくて色っぽい』を見てもらいたいですね。吉田さんは、もともとインスタグラムで見つけて、「いつか撮ってみたいなぁ」と密かに思っていた女の子。顔立ちやスタイルがきれいなだけでなく、自分の軸をしっかり持っているところに惹かれてしまったんですよね。
吉田あかり『自分史上、今一番初々しくて色っぽい』より
——吉田さんは、現在、女優・モデルとして、数々のドラマやバラエティ番組に出演中です。 週プレでは、昨年、初の水着グラビアを披露し、新人とは思えぬ色気と堂々とした佇まいで大きな反響を呼びました。
田口 吉田さんを撮らせてもらえることになった時、ちょうど私の中でも、グラビアで新しい表現ができないか考えていたタイミングだったんです。だからこの現場では、いつもメインで使っていたレンズではなく、あえてグラビアではほとんど出番のなかった望遠レンズを使って、少し引いた目線で撮ってみたり、アナログのレンズを使って、光のニュアンスを変えてみたり、いつもと違った表現に挑戦させてもらいました。吉田さんも、グラビアのお仕事に前向きというか。かなり気合いを入れて撮影に臨んでくれたみたいで、「素の自分でいるのがいちばんだと思うんだよね」と、ずっと明るく笑っていて。そういう意味でも、スゴく良い現場になった実感がありましたね。
——吉田さんにとって、週プレでの撮り下ろしは今回が3度目。確かに本作は、今まで以上に表情が活き活きしている印象を受けました。今年(2022年)10月にはファースト写真集も発売されましたし、モデルとしてカッコよくファッションを見せるのとは違った、グラビアならではの自分自身の見せ方に、やりがいを感じていたタイミングだったのかもしれないですね。
田口 気持ちが乗っている状態を撮らせてもらえるのは、めちゃくちゃラッキーなことですよ。やっぱり、その時々で女の子のコンディションは違いますからね。ただ、いい時も、もしかしたらよくない時も、そのタイミングでしか撮れない写真があるから、グラビアは面白いとも思います。エレイン・コンスタンティンのファッション写真を見て、そこにあるドキュメンタリー性に惹かれたって話もしましたけど(一話参照)、それはグラビアも同じなんですよね。
——グラビアにもドキュメンタリー性があると。
田口 もちろんです。数ある芸能活動の中、どんな経緯でグラビアに挑戦するのか。そしてグラビアに挑戦した後、どういった芸能活動を行なっていくのか……。どのタイミングで撮らせてもらうにしても、彼女たちの人生の一通過点を切り取ることに変わりはありませんよね。第一に、撮らせてもらうこと自体が貴重だからこそ、例え気持ちが乗っていなかったとしても、「今日はいいものを撮りましょう」なんて引っ張り方はしたくないですし、なるべくその子に適したテンション感で、気楽に撮ってあげたい。男性読者への意識は持ちつつも、私自身として、そういったドキュメンタリー的な視点も常に持ち続けているんですよね。
——なるほど。その感覚は、私も共感します。基本的に、タレントさんは笑顔を届けることが仕事だからこそ、グラビアでは、飾らない表情のままでいてほしいというか。
田口 その観点で言うと、いつかグラビアで、ひとりの女の子を撮り続けてみたいんですよね。というのも、10代の終わりくらいの頃に観た『STREETWISE/ストリートワイズ』(1983年製作)というドキュメンタリー映画がずっと大好きで。アメリカの写真家・マリー・エレン・マークと、彼女の夫であり映画監督のマーティン・ベルによって録られた作品で、シアトルの街で盗みや売春、物乞いして暮らす9人のストリートチルドレンの様子を追っているんですけど、当時、他人から見たら幸せとは言い難い日常でも、楽しそうに遊びながら生きる子どもたちのみずみずしさと美しさに衝撃を受けたんですよね。渋谷のTSUTAYAで、10回以上はVHSを借りたほどです(笑)。しかもエレン・マークは、その後30年も彼らを追いかけて、14〜5歳だった彼らが40代になった姿をも写真に収めているんですよ。スゴくないですか?
——ただストリートチルドレンの現状を伝えるだけではなかったと。そこまで追いかけてこそのドキュメンタリーという感じがしますね。
田口 ドキュメントを追い続ける写真家として、そこまで撮り続けたくなる被写体に出会えたってことが、彼女のスゴさだと思うんです。私も、そういった活動には憧れがあります。何を対象にするにしても、ひとつのものを撮り続けることは、今後やっていきたいです。ひとつ理想としては、9年仕事をして1年世界を旅するくらいのスパンで、旅と人をテーマにしたドキュメントを制作してみたい。そこでの体験を、グラビアにも掛け合わせていけたら面白そうじゃないですか。今ある見せ方の延長で、写真家として、どこまで自分が思う良さを表現できるか。グラビアの仕事を続けるにあたっての課題は、そこにある気がしますね。
第17回ゲストは、80年代後半からグラビアの第一線で活躍を続けている西田幸樹氏が登場! 2023/1/6(金) 公開予定です。お楽しみに!!
田口まきプロフィール
たぐち・まき ●カメラマン。1981年生まれ、熊本県出身。
趣味=旅行
写真家・宮原夢画氏のアシスタントを経験後、2007年より活動。
主な作品は、佐々木もよこ『Juicy HIPs』、植野有砂『#ALISA』、三品瑠香『EPHEMERAL』、大場美奈『答え合わせ』、我妻ゆりか『わがままゆりかの天使な笑顔』、個展にあわせて出版された『Beautiful Escape』『SEACRET GARDEN /0』など。女の子のポートレートを中心に、グラビア以外にも、カルチャー誌やファッション誌、広告なども手がけるほか、ファッションレーベル「HAVA」の立ち上げに携わるなど、その活動は多岐にわたる。