『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』小塚毅之編 第三話「こだわりを知る」 衝動性に躊躇しない。「最近の個人的な流行りは制服です(笑)」

あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。 



第6回目のゲストは、かつてまだ名もなき頃の優香(1997年、週プレ誌面で芸名募集)を撮り下ろした小塚毅之氏が登場。川村ゆきえ『ゆっきー・ざ・ばいぶる!』のほか、くりえみ『ネコ目線』、橋本萌花『社長令嬢のフェロモンキャンプ』など、個性的な作品を残してきた小塚氏に、その表現のルーツを聞いた。


小塚毅之 作品のデジタル写真集一覧はコチラから!


――小塚さんといえば、“寄り”のイメージです。最近だとくりえみさんの『ネコ目線』とか、かなりインパクトがありましたよ。



小塚 あぁ、寄るのは好きですね(笑)。この『ネコ目線』は、文字通りネコの目線になって、部屋で無防備に過ごすくりえみさんに迫ったグラビア。編集の方から提案いただいたコンセプトだったんですけど、数日前から「ネコだったら部屋のなかでどんな動きをするかな?」と、ちょっと気持ちを作っていったんですよね。


すごく楽しかったです。寝ている飼い主の布団のなかに潜り込むの、ネコっぽいかな?みたいな。そういうことも全然恥ずかしげもなくできちゃうので、片時もくりえみさんから離れることなく、ずっとネコになり切って動き回っていました(笑)。完全に、くりえみさんだったからできたグラビアでしたね。


――このようにモデルさんに近距離で迫る撮影スタイルは、何かきっかけがあって確立したものなんでしょうか?


小塚 グラビアを撮りはじめて1年くらいの頃は、標準レンズで、三脚を立てて撮影していました。それこそ、優香ちゃん(第二話参照)を撮ったときもそうです。フィルムカメラの時代は、グラビアでも三脚を立てて撮られるカメラマンさんがわりと多かったんですよ。


屋外での撮影や、スタジオでストロボを使って撮影をするときは、手持ちでしたがね。そうやって撮影をしていたら、とある週プレの編集の方に言われたんです。「何じっと撮ってんだ。カメラ持って動き回らなきゃダメでしょ」って。


――そうだったんですね。三脚を立ててなんて、今の小塚さんの写真を見ていると考えられないです。


小塚 その辺りからですかね。撮りたい衝動を大切に、躊躇せずに動くことを意識するようになったのは。あと、やっぱりイエローキャブの『Dynamite 5』を撮った経験も大きい気がします(第二話参照)。


きっかけというよりは、この撮影のために新しく買ったカメラのピントがとても合わせやすくて。おかげで、自由に動きながら撮影ができたんですよね。今となっては、思いっきり相手の顔にレンズを近づけて撮ることもあります。三脚も持ってはいますけど、10年ほど使っていないですね。


――その衝動性こそ小塚さんの撮るグラビアの魅力だと感じていました。夢中になって、楽しんで撮られている感覚がストレートに伝わってくるので、見ていてワクワクするんですよね。


小塚 僕、実生活ではできないことをグラビアで叶えられたらって思いがあるんですよ。きれいな女の子と同棲したい、旅行に行ってみたい。実現は難しくても、みなさん、妄想はされるじゃないですか。もちろん、編集の方からいただいたテーマに沿って考える場合もありますけど、基本的には「こんなグラビアがあったら見てみたいな」って気持ちを、全力で撮影にぶつけるようにしているんですよね。


――具体的に、小塚さんの“見てみたい”が叶ったグラビア(デジタル写真集)といえば、何がありますか?



小塚 最近だと、橋本萌花ちゃんの『社長令嬢のフェロモンキャンプ』。そもそも、萌花ちゃんのことはずっと撮ってみたかったんですよ。スタイルはいいし、今どきの子って感じでかわいいし、いろんなテイストがハマりそうだなぁって。そんなことを思っていたら、キャンプ特集号のグラビアで、初めて撮らせてもらえることになったんですよね。


――山のなかで橋本さんが制服を着てキャンプを楽しんでいる、という設定のグラビアですね。「果たしてこれはキャンプなのか?」と思うカットも多々ありますが(笑)、橋本さんのスタイルの良さが感じられるいいグラビアでしたよね。私も大好きです。


小塚 ありがとうございます。実は「制服キャンプとかどうですか?」と提案したのは僕なんです。最近は、大人でも“制服ディズニー”を楽しむなんて聞きますし、キャンプもアリなんじゃないかと。萌花ちゃんなら絶対に制服が似合う確信もありましたし、ちょうど僕のなかでの流行りがスクール系というか、制服だったので(笑)、実現してうれしかったですよ。


――グラビアで“自分のなかの流行りを取り入れる”ことは、結構あるんですか?



小塚 ありますね。そうすると僕が楽しいので(笑)。『社長令嬢のフェロモンキャンプ』でいうと、自転車にも跨ってもらいたかったんですよ。それで、前日に近くのサイクルショップでいい自転車を見つけて、それを買って持って行って。とはいえ、いい絵が撮れた手応えはあったものの、本誌では自転車に跨ったカットが一枚も使われていなかったんですよね。


当初はデジタル写真集も出る予定じゃなかったので残念でしたが、こうしてリリースされて、日の目を浴びてくれてよかったですよ。みなさんに見ていただかなかったら、撮っていないのと一緒。僕一人が楽しんでいたって意味がないですからね。


――お話を聞いていて、小塚さんのグラビアに見る“ワクワク感”や“ノリの良さ”は、小塚さんの衝動性と楽しまれている気持ちの表れなんだと、ガツンと腑に落ちました。制服や自転車など、具体的な“見てみたい”をド直球に求めることで、タレントさんにも全力が伝わるといいますか。ノりやすくなるのかな、と。



小塚 もっと過去にさかのぼると、2001年の週プレで、小池栄子ちゃんを撮りにサイパンに行ったのも、“見てみたい”が発端で。すごく楽しかったですよ。そのグラビアは表紙にもなったんですけど、撮ったあとの手応えもありましたし、写真のセレクトや構成を担当編集の方と一緒にやらせていただいて、いつも以上に、全力を出し切れた実感がありました。


――どんなコンセプトで撮影されたグラビアだったんですか?


小塚 カメラマンを目指しはじめた当初は、師匠である中村(昇)さんの真似から入ったとお話ししましたよね(第二話参照)。そんななかで、少しずつ僕なりの個性も見つけていこうと、次第に、書店の洋書コーナーに置かれてあったマリオ・テスティーノやRankinなど、エッジのきいた海外のカメラマンの写真集をよく見るようになったんですよ。


アメリカのスポーツ誌『スポーツ・イラストレイテッド』で年に一回ほど出ていた水着特集号なんかもよく読んでいましたね。要は、アメリカナイズな雰囲気のパキッとした写真に惹かれていったんです。そこで、栄子ちゃんならアメリカナイズなグラビアと絶対に相性がいいぞと。ザ・アメリカな風景を求めて、サイパンへ飛び立ったんです。


――確かに、お話を聞くだけでもパキッと写る小池さんのグラビアが想像できます。


小塚 表紙のカットは、海外の雑誌で流行っていた日中シンクロ(日中にストロボを使用し、あえて影の部分にも光をあてる撮り方)という手法で撮りました。肌にオイルを塗って、バチっとストロボをあてて。


当時にしては目新しいグラビアが撮れて、うれしかったですね。栄子ちゃん自身、相当名前が売れてきたタイミングでしたし、僕もかなり気持ちが盛り上がっていました。あのグラビアは、いまだに忘れられないですね。


小塚毅之編・最終話は2/25(金)公開予定! “自分のなかでの流行りを知る大切さ”を語る。


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小塚毅之プロフィール

こづか・たかゆき ●写真家。1967年生まれ、愛知県出身。

趣味=映画鑑賞、散歩

集英社スタジオ勤務時に写真家・中村昇氏から指導を受け、卒業後、週刊プレイボーイ写真室に在籍。その後、1997年に独立。

主な作品は、川村亜紀・小池栄子・坂井優美・佐藤江梨子・松岡ゆき『Dynamite 5』、佐藤江梨子『cinnamon』、小倉優子『りんごともも』、熊田曜子『TЯAP! 』、川村ゆきえ『ゆっきー・ざ・ばいぶる!』、森下悠里『秘めごと。』など。3月25日、林田百加 1st写真集『ハイレグの国』(竹書房)が発売予定。また、オムニバスおっぱい写真集『コレクション インフィニティ』も発売中。被写体に接近した生々しい作風で、唯一無二の世界観を見せる。


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