2022年2月25日 取材・文/とり
あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく本コラム。“カメラマン側から見た視点”が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4回にわたってお送りする。
第6回目のゲストは、かつてまだ名もなき頃の優香(1997年、週プレ誌面で芸名募集)を撮り下ろした小塚毅之氏が登場。川村ゆきえ『ゆっきー・ざ・ばいぶる!』のほか、くりえみ『ネコ目線』、橋本萌花『社長令嬢のフェロモンキャンプ』など、個性的な作品を残してきた小塚氏に、その表現のルーツを聞いた。
――前話では、小塚さん自身が現場を楽しみながらグラビアを撮る一方で、読者の方に見てもらわないと意味がないというお話もありました。週プレ グラジャパ!には、小塚さんが撮影されたデジタル写真集が約50作(2022年2月現在)ありますが、読者の方に、どういうところに注目して見てもらいたいですか?
小塚 “ナマっぽさ”ですかね。グラビアを撮るうえで衝動性を大切にしているのは、現場で見たそのままを、なるべくストレートに写したいからですし、躊躇なく女の子に寄るのも、衝動性から生まれたリアルな距離感を感じてもらいたいからで。
僕自身、ライブ感のある写真が好きなので、写真の色味を調整するにしても、その場の空気がより伝わるよう、できる限り僕が見たままの景観を再現するよう心がけているんですよね。
それに、動きがあったり、表情や身体に寄ったりしている写真は、本誌に掲載されるとしても数が限られてしまうのですが(笑)、デジタル写真集には多く載せてもらっています。ですので、ぜひデジタル写真集も見ていただいて、女の子のリアルなそのままを存分に楽しんでもらいたいですね。
――本誌の数ページを組むとなると、寄りと引きのバランスが大事になってきますからね。では、数あるなかで特にお気に入りのデジタル写真集を教えてください!
小塚 いくつかあるので順不同でお願いします。まず、先ほどお話ししたくりえみちゃんの『ネコ目線』と橋本萌花ちゃんの『社長令嬢のフェロモンキャンプ』(第三話参照)。それと、木村葉月ちゃんの『フェチ+ism』がお気に入りですね。
葉月ちゃんが醸し出すロリータな雰囲気とフェティッシュな感じが、独特な魅力を放っていて。まぁ結局のところ、このロリータ感も、萌花ちゃんの“制服キャンプ”同様、僕のなかの流行りであるスクール(制服)系という括りの一部なんですけどね(笑)。
――木村さんといえば、週プレでの初グラビアとなった『少女H』も印象的でした。少女の淡いひと夏を感じるこちらのデジタル写真集には、制服姿のまま海へ走っていくシーンがありますね。
小塚 この撮影も思い出深いなぁ。この頃の葉月ちゃんはまだ19歳なんですけど、葉月ちゃんに限らず、10代の子の表情は自然と追いたくなるというか、気付いたら「この衣装、もう撮れちゃったな」ってことが度々あるんですよね。撮る前は、この衣装ではこう撮って……といろいろ考えてから臨むのに、いざ撮影が始まると体が勝手に動いて、あっという間に撮れてしまっているんですよ。
――気付いたら撮れていたって、ものすごく理想的な撮り方じゃないですか!
小塚 そうですよね。それだけ夢中になって撮れるのは、僕としても楽しいです。さらに『少女H』は、ただかわいいだけじゃなく、少女ならではの危うさが感じられるところが見どころだと思っていて。そんな葉月ちゃんの雰囲気を察して、途中でレンズを変えつつ、爽やかなだけの制服グラビアにならないよう撮ったのを覚えていますね。
――より木村さんらしい雰囲気が伝わるよう、現場で臨機応変に調整されていたんですね。
小塚 それと、もう一冊。杉原杏璃さんの『杉原杏璃・極ーグラビアアイドルの裏側ー』もお気に入りですね。テーマは逃避行。デビューから10年以上が経ち、グラビアアイドルとして新しいフェーズに入っていくなか、自伝的映画が公開されるタイミングで掲載されたグラビアで。杏璃さんの気合も感じましたし、僕も集中して撮影していた記憶があります。
――本誌では袋とじで掲載されていましたよね。“海沿いのホテルに着くやいなや、杉原さんが艶(なまめ)かしく乱れていく”というストーリーが描かれたデジタル写真集の構成も、インパクトがありました。
小塚 このデジタル写真集の構成は僕も気に入っています。本当にうまく組んでくださっていますよね。あまり自分が撮ったグラビアを見返すことはないのですが、この杏璃さんのグラビアだけは、大人の女性の方を撮らせていただく撮影の前日に「こうやって撮っていたなぁ」「こんな風に逃避行感を演出していたなぁ」と当時の感覚を思い出すために、改めて見返すことがあるくらいです。
普段、何かイメージを膨らませるにしても、ファッションやスナップなどの全く別ジャンルの写真か映画を参考にする場合がほとんどなんですけどね。杏璃さんのグラビアは、それくらい僕自身も手応えがあったんですよね。
――逃避行とは少し違うかもしれませんが、大人の女性のグラビアだと、個人的には、小湊優香さんの『何かありそうな夜。』が好きですね。まさしく、大人同士だからできる秘密の小旅行的な“ナマっぽい”空気を感じました。
小塚 小湊さんのグラビアは、確か“危険なドライブ旅”がテーマだったんですよね。そのため、なるべく小湊さんのようなお姉さんがリアルに着ていそうな衣装を用意していただいて、まずは宿の周りをプラプラ歩いて、道端や車のなかでそっとスカートをめくってもらって……。タイトルの通り、“あてのない旅の道中で何か起こるかもしれない危うい関係性”を意識して撮影していました。
緊張を解(ほぐ)す意味でも、このように、最初は洋服姿で近くの路地や海辺を歩いて撮って、行き帰りで他愛のない会話をしながら、お互いに気持ちをリラックスさせた状態で撮影を進めていくパターンはわりと多いかもしれません。
それこそグラビアに慣れていない子を撮影するときには、スタッフみんなでと和気あいあいと散歩をしつつ、自然とコミュニケーションをとるようにしていますね。
――小塚さんらしい寄りのカットや“ナマっぽさ”は、そうやって緩やかにコミュニケーションを重ねるなかで、自然と生まれる距離感なのかもしれないですね。では最後に、小塚さんの今後の展望を教えてください!
小塚 今の個人的な流行りはスクール系(制服)なんですが、これからも、そういった自分なりの流行りにどんどんノっかっていきたいですね。流行りがあるかないかで、撮影中のテンション感も、撮れる写真も、全然変わってきますから。自分の流行りを取り入れた撮影ほどノリノリで臨めますし、よく撮れた実感も持てます。
逆に、流行りがないときは自分自身の停滞です。次、どんな流行りが来るかは分かりませんが、ジャンルにとらわれず新しいものを見て、何か引っかかる要素があれば、変化を恐れず新しい方向に流れていきたい。そうしてグラビアに新しい色を加えていけたら、カメラマンとして、もっとグラビアを楽しめるんだろうなぁと思いますね。
――心なしか「いいな」と思うグラビアは、女の子以上に、カメラマンさんの気持ちがノっているかどうかにかかっている気がします。グラビアで見られる女の子の表情は、カメラ越しであることが絶対ですしね。もちろん、女の子の気持ちがそこにノっかっていれば、なお良いのですが。
小塚 あとは、現場にいるスタッフみんなの感覚にノって流れていくのも大切ですよね。流れにノるなかで、はじめに想定していたグラビアと違う形になったとしても、それが現場にいるみんなの感覚で流れ着いた先なら、むしろそれでいいというか。現場で流れていける自由さこそが、グラビアの面白さですよね。そういう流行りや流れに躊躇なくノる気持ちは、忘れずに持っていたいですね。
第7回ゲストは、吉岡里帆の貴重な初グラビアを撮り下ろした岡本武志さんが登場! 2022/3/4(金) 公開予定です。お楽しみに!!
小塚毅之プロフィール
こづか・たかゆき ●写真家。1967年生まれ、愛知県出身。
趣味=映画鑑賞、散歩
集英社スタジオ勤務時に写真家・中村昇氏から指導を受け、卒業後、週刊プレイボーイ写真室に在籍。その後、1997年に独立。
主な作品は、川村亜紀・小池栄子・坂井優美・佐藤江梨子・松岡ゆき『Dynamite 5』、佐藤江梨子『cinnamon』、小倉優子『りんごともも』、熊田曜子『TЯAP! 』、川村ゆきえ『ゆっきー・ざ・ばいぶる!』、森下悠里『秘めごと。』など。3月25日、林田百加 1st写真集『ハイレグの国』(竹書房)が発売予定。また、オムニバスおっぱい写真集『コレクション インフィニティ』も発売中。被写体に接近した生々しい作風で、唯一無二の世界観を見せる。